ソネット(英語表記)sonnet

翻訳|sonnet

デジタル大辞泉 「ソネット」の意味・読み・例文・類語

ソネット(sonnet)

ヨーロッパ叙情詩の一形式。13世紀イタリアに始まり、14行からなる。四・四・三・三、または四・四・四・二の行構成をとり、脚韻をふむ。14行詩。小曲。
[類語]うた詩歌韻文詩賦しふ吟詠ポエムバース詩編叙情詩叙事詩定型詩自由詩バラード新体詩

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精選版 日本国語大辞典 「ソネット」の意味・読み・例文・類語

ソネット

  1. 〘 名詞 〙 ( [イタリア語] sonetto [英語] sonnet ) 一四行から成る近世ヨーロッパの抒情詩の一形式。イタリアで起こり、ルネサンス期にドイツ・フランスイギリスに広まった。十四行詩。短詩。
    1. [初出の実例]「ソンネットの二編も読んだか」(出典:小春(1900)〈国木田独歩〉二)

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改訂新版 世界大百科事典 「ソネット」の意味・わかりやすい解説

ソネット
sonnet

ヨーロッパの抒情詩における伝統的な詩型の一つ。小曲もしくは十四行詩と訳される。語源は不明だが,おそらく〈小さな歌〉の意で,民間歌謡を起源とするらしいが,13世紀末ころからイタリアで定型詩として確立された。ダンテは《新生》の中で初期のソネットの作例を示すが,とりわけペトラルカがこれを多用したのが名高く,彼の影響(ペトラルキスモ)とともに,この詩型もヨーロッパ全土にひろまって,とくに恋愛詩に用いられた。フランスでは16世紀にクレマン・マロがこれを導入して以来,デュ・ベレー,ロンサールらのプレイヤード派によってフランス風ソネsonnetが完成され,17世紀には宮廷やサロンを中心に流行した。その後衰えたが19世紀半ばから復活,高踏派の詩人たちをはじめ,ボードレールマラルメ,ベルレーヌ,エレディア,バレリーらがすぐれた作例を示した。イギリスではシェークスピアが《ソネット集》においてイギリス風もしくはシェークスピア風ソネットを定着させ,ミルトンらを経て19世紀にはワーズワースキーツ,D.G.ロセッティらがこの形式を用い,とりわけエリザベス・ブラウニングの《ポルトガル女のソネット》が名高い。ほかに16世紀には,イタリアではミケランジェロ,スペインではボスカン,ポルトガルではカモンイスらがこれを愛用した。ドイツではゲーテらの作例があり,20世紀に入ってはリルケの《オルフォイスにささげるソネット》がある。

 ソネットの形式は,等韻律の詩句を四行詩2連,三行詩2連の順に並べるもので,脚韻はABBA,ABBA,CCD,EDE(またはEED)と配置するのが最も厳密な形とされ,ボアローが〈完璧なソネ一編は長詩に匹敵する〉と述べたほどの圧縮洗練された形式美を示す。また最後の1行には,一編の結びとして,とりわけ鮮やかで水際だった詩句が求められる。しかし西欧の詩としては比較的短い形式なので,実際には幾編もの連作として発表されることが多い。初期のイタリアではABBA,ABBA,CDC,CDC(またはCDE,CDE)の韻が用いられた。またシェークスピアのそれは,ABAB,CDCD,EFEF,GGの形をとり,四行詩3節のあとへ二行詩1節を添えたようになっている。

 日本では明治末に蒲原有明薄田泣菫がヨーロッパ詩の影響下にソネットを試み,みごとな形式美をもつ作品を残したが,脚韻配置までは手が届かなかった。昭和期には立原道造のソネットが名高いが,これは事実上自由詩に近く,わずかに様式へのあこがれを示したものと見るべきだろう。しかし,その清新で繊細な抒情はこの詩型にふさわしいものとなった。第2次大戦直後に刊行されたマチネ・ポエティク中村真一郎,福永武彦ら)の詩作には押韻ソネットの試みが見られる。現代では谷川俊太郎に詩集《六十二のソネット》がある。
抒情詩
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百科事典マイペディア 「ソネット」の意味・わかりやすい解説

ソネット

ヨーロッパの抒情詩の代表的な詩型の一つ。小曲。定型詩としてのsonnetは,イタリアのダンテペトラルカによって完成された14行詩で,二つの4行詩節と二つの3行詩節からなる。16世紀に各国に伝わり,押韻の形式,音歩数に変化はあるが,シェークスピアワーズワースボードレールらが傑作を書いた。
→関連項目グリューフィウス立原道造ハワードプラーテンマロワイアット

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ソネット」の意味・わかりやすい解説

ソネット
sonnet

1編が 14行から成る詩型。起源は不明だが,中世の歌謡から発展したものといわれ,14世紀のイタリアにはすでに作品の例がある。押韻の構造によって,イタリア式とイギリス式に分けられる。韻律はその言語の最も一般的なもの,たとえばイギリスでは弱強五歩格,フランスではアレクサンドランが用いられる。イタリア式ソネットは8行のオクテーブ (押韻は abbaabba) と6行のセステット (cdccdcまたは cdecde) から成り,ダンテやペトラルカによって書かれ,特にペトラルカがラウラという女性を歌った一連の作品は,この形式の模範とされた。ソネットはルネサンス期のヨーロッパ全土でもてはやされたが,イギリスでは,T.ワイアットとサリー伯その他の詩集『トトル詩選集』 (1557) に現れたものが最初である。エリザベス朝では,一定の主題を扱う連作ソネットが流行したが,それらの大部分はイタリア式の押韻構造に従っていない。たとえば E.スペンサーは ababbcbccdcdee,シェークスピアは ababcdcdefefggという形を用いた。イギリス式と呼ばれるのは,このシェークスピアの形式で,四行連句を3つ重ねて最後を二行連句で結ぶところに特徴がある。ただし,これはさほど広くは用いられず,ミルトン,ワーズワスら,代表的ソネット作者は,イタリア式の構造にだいたいにおいて従った。近代以後,ソネットは以前ほど多くは書かれなくなったが,イギリスではキーツ,ブラウニング夫人,D.G.ロセッティらがすぐれた作品を残し,ボードレール,マラルメ,バレリー,リルケらも重要な作品をソネット形式で書いている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソネット」の意味・わかりやすい解説

ソネット
そねっと
sonnet

14行からなる代表的定型詩。13世紀イタリア民謡が原形で、その美しいメロディーによって恋歌に頻用され、とくにペトラルカ、ダンテらにより完成をみてから、ルネサンス期ヨーロッパ一円に流行。構成は4行、4行のオクターブ、3行、3行のセステットで、あわせて14行。1行は、イタリアで11音節、フランスで12音節、イギリスで10音節からなり、脚韻はペトラルカ方式では、abbaと厳しい制約がある。内容的には、一つの詩想を歌い上げ起承転結の節目正しい一つのまとまりにつくりあげる。その構成は、まず主題が出され、次に展開があり、一転して新しい詩想が導入され、エピグラム風の力ある帰結を迎える。恋愛詩が多く、数十の連作となることもある。

 ペトラルカの『カンツォニエーレ』がもっとも優美な作として知られ、フランスのロンサール、ドイツのシュレーゲルらも秀作を残している。イギリスには16世紀初期に導入され、シェークスピアによってイギリス風韻律ababがくふうされ、ミルトン、ワーズワース、キーツ、ブラウニング夫人ら後継詩人の作も多い。日本でも蒲原有明(かんばらありあけ)、上田敏(びん)らによる実験的試作があるが、日本語の押韻のない言語的性格から、ソネットはあまり発展をみていない。

[船戸英夫]

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デジタル大辞泉プラス 「ソネット」の解説

ソネット

フランスの筆記具ブランド、パーカーの筆記具。1994年まで製造されていた「パーカー75」のデザインを踏襲。万年筆とボールペンがある。

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世界大百科事典(旧版)内のソネットの言及

【イタリア文学】より

シチリア[文学] 一般に発生期もしくは揺籃期のイタリア文学を,その俗語表現の粗さから,未成熟の思想もしくは詩法の所産と思いこみがちであるが,〈シチリア派〉の詩人たちに関して,それがまったくの的はずれであることを強調しておかねばならない。もしもそのように知的水準の低い文学集団であったならば,たとえばジャコモ・ダ・レンティーニGiacomo da Lentini(?‐1250)が永遠の詩型〈ソネット〉を創始した,などという事態は起こりえなかったであろう。現に,フェデリコ2世はギリシア語,ラテン語,イタリア俗語をはじめ,フランス,ドイツ,アラビアの諸語にも通じていたと言われる。…

【エリザベス時代】より

…また,華麗な文体で書かれたジョン・リリーの恋愛物語《ユーフュイーズ》やフィリップ・シドニーの牧歌的ロマンス《アーケイディア》はイギリス最初の小説として,1611年に公刊された《欽定訳聖書》とともに,文学史上特記さるべき地位を保っている。詩の分野では,絵画的描写と音楽美にあふれたエドマンド・スペンサーの長大な寓意叙事詩《神仙女王》が名高いが,ソネットをはじめとするさまざまな詩形の短い抒情詩も流行した。17世紀にはいると,当時の新旧思想の対立を背景に知的奇想と逆説的機智を特徴とするいわゆる〈形而上詩〉が盛んになり,それを代表するジョン・ダンの詩は20世紀初頭の近代詩運動に大きな影響を及ぼした。…

【シチリア派】より

…作品の主題は主として〈宮廷風恋愛〉であり,高貴な婦人への思いが歌われたが,愛の性質・様態をめぐる観念的・自然科学的詮索が好んで行われた。詩型としてはカンツォーネが多く,またそれと並んでソネットが用いられ始めたのが注目される。同派の作品は知的技法に基づき,主題的・文体的にきわめて様式化されている点が特徴である。…

※「ソネット」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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