ソネット(読み)そねっと(英語表記)sonnet

翻訳|sonnet

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ソネット」の意味・わかりやすい解説

ソネット
sonnet

1編が 14行から成る詩型。起源は不明だが,中世の歌謡から発展したものといわれ,14世紀のイタリアにはすでに作品の例がある。押韻構造によって,イタリア式とイギリス式に分けられる。韻律はその言語の最も一般的なもの,たとえばイギリスでは弱強五歩格,フランスではアレクサンドランが用いられる。イタリア式ソネットは8行のオクテーブ (押韻は abbaabba) と6行のセステット (cdccdcまたは cdecde) から成り,ダンテやペトラルカによって書かれ,特にペトラルカがラウラという女性を歌った一連の作品は,この形式模範とされた。ソネットはルネサンス期のヨーロッパ全土でもてはやされたが,イギリスでは,T.ワイアットとサリー伯その他の詩集『トトル詩選集』 (1557) に現れたものが最初である。エリザベス朝では,一定の主題を扱う連作ソネットが流行したが,それらの大部分はイタリア式の押韻構造に従っていない。たとえば E.スペンサーは ababbcbccdcdee,シェークスピアは ababcdcdefefggという形を用いた。イギリス式と呼ばれるのは,このシェークスピアの形式で,四行連句を3つ重ねて最後二行連句で結ぶところに特徴がある。ただし,これはさほど広くは用いられず,ミルトン,ワーズワスら,代表的ソネット作者は,イタリア式の構造にだいたいにおいて従った。近代以後,ソネットは以前ほど多くは書かれなくなったが,イギリスではキーツ,ブラウニング夫人,D.G.ロセッティらがすぐれた作品を残し,ボードレールマラルメバレリー,リルケらも重要な作品をソネット形式で書いている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソネット」の意味・わかりやすい解説

ソネット
そねっと
sonnet

14行からなる代表的定型詩。13世紀イタリア民謡が原形で、その美しいメロディーによって恋歌に頻用され、とくにペトラルカ、ダンテらにより完成をみてから、ルネサンス期ヨーロッパ一円に流行。構成は4行、4行のオクターブ、3行、3行のセステットで、あわせて14行。1行は、イタリアで11音節、フランスで12音節、イギリスで10音節からなり、脚韻はペトラルカ方式では、abbaと厳しい制約がある。内容的には、一つの詩想を歌い上げ起承転結の節目正しい一つのまとまりにつくりあげる。その構成は、まず主題が出され、次に展開があり、一転して新しい詩想が導入され、エピグラム風の力ある帰結を迎える。恋愛詩が多く、数十の連作となることもある。

 ペトラルカの『カンツォニエーレ』がもっとも優美な作として知られ、フランスのロンサール、ドイツのシュレーゲルらも秀作を残している。イギリスには16世紀初期に導入され、シェークスピアによってイギリス風韻律ababがくふうされ、ミルトン、ワーズワース、キーツ、ブラウニング夫人ら後継詩人の作も多い。日本でも蒲原有明(かんばらありあけ)、上田敏(びん)らによる実験的試作があるが、日本語の押韻のない言語的性格から、ソネットはあまり発展をみていない。

[船戸英夫]

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