日本大百科全書(ニッポニカ) 「商事寄託」の意味・わかりやすい解説
商事寄託
しょうじきたく
商人がその営業の範囲内で寄託を引き受けること。寄託の引受けを本来の営業としている倉庫営業の場合はもとより、場屋(じょうおく)の取引に関連して携帯品を保管する場合や、問屋(といや)の販売委託品の保管、その他デパートの一時預かりのように附属的商行為として営業のために寄託の引受けをする場合も含む。すべての場合に通じ、商人は、保管料をとらない無償寄託の場合でも、善良なる管理者の注意義務をもって保管しなければならない(商法593条)。民法上、無償寄託の場合には自己の財産におけると同一の注意をもって物を保管すれば足りるとしている(民法659条)のに対し、商法は特則を設け、商人の信用を重んじ、取引の円滑を図るために、商人の責任を加重している。なお、倉庫業者や場屋の主人については、前記の一般規定のほかに、それぞれ別に厳重な保管責任を定めている(商法594条~596条・617条)。
[戸田修三]