嘉靖の大倭寇(読み)かせいのだいわこう

改訂新版 世界大百科事典 「嘉靖の大倭寇」の意味・わかりやすい解説

嘉靖の大倭寇 (かせいのだいわこう)

16世紀中国,明の嘉靖年間(1522-66)に中国大陸沿岸をはじめ日本・朝鮮・南洋方面などを舞台にして行動した倭寇。16世紀の倭寇の構成員は,日本人は10~20%にすぎず,大部分は中国の浙江・福建地方の密貿易者で,当時東アジアに進出してきたポルトガル人もこれに加わった。密貿易者群の根拠地は,浙江の双嶼(そうしよ)(ポルトガル人はリャンポーといった)と瀝港(列港)(れつこう)であるが,この地が明の官憲の攻撃をうけて掃討されると,密貿易者たちは海寇集団に一転した。首領には王直徐海らがいた。彼らの行動は1551年(嘉靖30)以後はげしくなり,中国沿海の人民をまきこみ,各地を荒らしまわって猛威をふるった。とくに王直は日本の五島に根拠をおき,日本人を誘いこんで東シナ海から朝鮮半島方面まで行動した。王直が誘殺されたのちには徐海が海寇団を率いたが,しだいに撃破されていった。
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世界大百科事典(旧版)内の嘉靖の大倭寇の言及

【海賊】より


[国際法上の海賊]
 国際慣習法上,海賊pirateとは国家機関としてではなく私的目的で,公海において他の船舶の交通の安全を脅かす性質の暴力行為を行う者をいう。1958年の〈公海条約〉では,私有の船舶・航空機の乗組員,乗客が,私的目的のために,公海上またはいずれの国の管轄権にも服さない場所で,他の船舶・航空機またはこれらのなかにある人,財産に対して行うすべての不法な暴力行為,抑留または略奪行為を,海賊行為と規定した(15条)。…

【倭寇】より

…文字の初見は404年の高句麗広開土王碑文にあるものだが,豊臣秀吉の朝鮮出兵も20世紀の日中戦争もひとしく倭寇の文字であらわされた。時期,地域,構成員などを規準につけられた倭寇の称呼には,〈高麗時代の倭寇〉〈朝鮮初期の倭寇〉〈麗末鮮初の倭寇〉〈元代の倭寇〉〈明代の倭寇〉〈嘉靖の大倭寇〉〈万暦の倭寇〉〈二十世紀的倭寇〉〈朝鮮半島の倭寇〉〈山東の倭寇〉〈中国大陸沿岸の倭寇〉〈浙江の倭寇〉〈杭州湾の倭寇〉〈双嶼(そうしよ)の倭寇〉〈瀝港(れつこう)の倭寇〉〈台湾の倭寇〉〈ルソン島の倭寇〉〈南洋の倭寇〉〈シナ人の倭寇〉〈朝鮮人の倭寇〉〈ポルトガル人の倭寇〉〈王直一党の倭寇〉〈徐海一党の倭寇〉〈林鳳一味の倭寇〉などがある。以上の倭寇のうち,最も規模が大きくまた最も広範囲に活動したのは14~15世紀の倭寇と16世紀の倭寇である。…

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