改訂新版 世界大百科事典 「国境警備隊」の意味・わかりやすい解説
国境警備隊 (こっきょうけいびたい)
border guard
国境線を防衛し,警備する組織をいい,正規軍の一部隊である場合と,正規軍とは別個に,軍隊に準じて組織された武装集団である場合とがある。後者はかつての共産圏諸国で一般的で,通常,密輸出入,密出入国の監視などを主任務とするが,戦時には軍隊とともに戦闘に参加する。この典型が旧ソ連の国境警備隊Pogranichnye voiskaで,1980年現在兵力約20万をもち,通常の国境警備のほか領海内の水路保持,魚類生物資源の保護までも任務としていた。国境警備隊は1918年に創設され,ソ連邦国家保安委員会(KGB)と同国境軍総局から指揮を受けており,革命後の内乱,ノモンハン事件,第2次世界大戦などの戦闘にも参加してきた。国境警備兵は徴兵合格者の中から選ばれ,地元には配置しない,同郷人および親友は同一部隊に所属させないなど厳しい配慮がされている。部隊は若干の特殊技術器材のほかは小火器程度の軽装備である。地上の警備隊のほかに航空隊,哨戒艦隊も保有している。一方,アメリカにおいては規模は小さいが,司法省に属する機関として国境警備隊Border Patrolが存在しており,国境線やフロリダ,メキシコ湾沿岸の警備にあたっている。
執筆者:茅原 郁生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報