司法省(読み)しほうしょう

精選版 日本国語大辞典 「司法省」の意味・読み・例文・類語

しほう‐しょう シハフシャウ【司法省】

〘名〙 法務省の前身。裁判、検察、行刑などに関する行政事務を取り扱う官庁明治四年(一八七一設置。昭和二二年(一九四七廃止。以後法務庁から法務府に変わり、同二七年法務省となった。
※明治の光(1875)〈石井富太郎編〉二「司法省へ出られて、対論ありたり」

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デジタル大辞泉 「司法省」の意味・読み・例文・類語

しほう‐しょう〔シハフシヤウ〕【司法省】

明治4年(1871)に設置され、司法に関する行政事務統轄した中央官庁。昭和22年(1947)廃止。法務省の前身。
《department of justiceなどの訳語》外国の中央政府司法行政を所管する省庁。「米国司法省」「中国司法部」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「司法省」の意味・わかりやすい解説

司法省
しほうしょう

司法に関する国の行政事務をつかさどる行政機関。刑部省(ぎょうぶしょう)、弾正台(だんじょうだい)にかわって、1871年(明治4)7月9日に設置され、翌年4月、初代司法卿(きょう)に江藤新平(えとうしんぺい)が就任した。この司法省のもとでしだいに司法制度の整備・体系化が進められ、これに伴ってしばしば官制の改革も行われた。85年12月、太政官(だじょうかん)制にかわる内閣制の創設に伴い司法卿の職制を廃して司法大臣を置き、内閣の統轄下における一省となった。翌年2月26日の「司法省官制」(勅令2号)で、司法大臣の所掌事務の範囲・権限は、司法に関する行政・司法警察および恩赦に関する事務を管理し、大審院以下の諸裁判所を監督することと規定され、内部部局として大臣官房および総務、民事、刑事、会計の諸局が設けられた。その後、明治憲法体制下でいくたびか官制の改革が行われたが、司法省は、一貫して司法行政事務全般を管轄し、司法行政に関する限り大審院以下の裁判所を司法大臣の監督下に置いていた。第二次世界大戦後、日本国憲法の制定に伴い、1947年(昭和22)12月17日、新たに法務庁(のち法務府、法務省と改称して現在に至る)が設置され、司法省は廃止された。司法権の独立を原則とする日本国憲法下における現在の法務省とは、その権限において大きな違いがある。

[吉井蒼生夫]

『司法省編纂『司法沿革誌』(1939・法曹会)』『法務大臣官房司法法制調査部編『続司法沿革誌』(1963・法曹会)』


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改訂新版 世界大百科事典 「司法省」の意味・わかりやすい解説

司法省 (しほうしょう)

1871年(明治4),それまでの刑部省弾正台を引き継いで新設された中央官庁。司法卿(初代,江藤新平),大少輔以下の官職のもとで,聴訴・断獄の事務をつかさどり,後には検察や警察行政をも担当し,また75年には大審院を設けて後の裁判所の機能をもその機構のなかに含めた。85年内閣制度が施行されると司法卿は廃止され,かわって司法大臣(初代,山田顕義)が任命された。翌年,官制改革があり,総務のほか,民事,刑事,会計各局が置かれ,同省が大審院以下の諸裁判所を管轄することになった。87年司法省の官制はさらに整備され,検事局を監督するとともに刑事,民事,戸籍,監獄,矯正や釈放者の保護など,検察,裁判,弁護,行刑など,広範囲な司法制度全般にわたる諸権限を集中し,その官庁機構の基礎を固めた。以後,内部の部局として民事,刑事,監獄その他各局の変更があったが,その主要な特徴は,帝国憲法に規定されたように司法権は統治者としての天皇に帰属し,〈天皇ノ官吏〉としての司法大臣が裁判所をその監督下に置いていたため,国民の基本的権利が制限されていた点である。そうした司法権に対する行政権の優位,司法権の独立に対する相対的制限を前提とした戦前の司法制度は,戦後の日本国憲法制定により,国民の基本的人権を尊重する立場から1948年,司法省が廃止され,新たに法務庁(後の法務省)の設置が実現した。
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百科事典マイペディア 「司法省」の意味・わかりやすい解説

司法省【しほうしょう】

司法行政の事務を管掌した旧中央行政機関。法務省の前身。1871年司法権統一のため従来の刑部(ぎょうぶ)省弾正(だんじょう)台を合わせて設置された。大審院はじめ諸裁判所をも統轄するなど法務省より権限は強大だった。1947年には最高裁判所が設置され,司法権は分離・独立,翌1948年には省そのものが廃止され法務庁が設置された。
→関連項目徳川禁令考

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「司法省」の意味・わかりやすい解説

司法省
しほうしょう

明治4 (1871) 年から 1947年まで司法行政事務を主管していた中央行政機関。慶応4 (68) 年太政官におかれた刑法事務科に始り,刑法事務局,刑法官,刑部省・弾正台を経て司法省となったもので,1885年内閣制度の成立とともにそれまでの司法卿に代え,司法大臣がおかれた。その所掌事務は裁判,検察,行刑などの司法行政事務全般に及んでいた。第2次世界大戦後の 1947年最高裁判所が設置されて,従来司法省のもっていた裁判所の監督権限は分離されてこれに移され,司法省も 47年法務庁の設置に伴って廃止となり,49年法務府,52年法務省と変った。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「司法省」の解説

司法省
しほうしょう

近代において司法行政事務を担当した政府の中央官庁。1871年(明治4)7月,刑部省・弾正台を廃止して太政官の1省として設置。裁判権を管掌。長官は司法卿(初代江藤新平)。75年大審院の設置により裁判権を移譲し,司法行政機関として裁判所の監督,検察の統轄にあたった。85年内閣制度の確立により内閣の1省となった。初代司法大臣は山田顕義。翌年司法省官制を公布,省内に大臣官房および総務・民事・刑事・会計の各局がおかれた。その後監獄業務を内務省から移管し,監獄局を設置。昭和期に入り少年犯・思想犯保護業務を管轄。敗戦後の1947年(昭和22)日本国憲法施行とともに全面的機構改革が進み,48年廃省となり法務庁が新設された。

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旺文社日本史事典 三訂版 「司法省」の解説

司法省
しほうしょう

1871年設置された司法行政事務をつかさどる中央行政機関
初代司法卿は江藤新平。司法大臣は諸般の司法行政事務のほか,検事局や裁判所の人事・行政監督権など大きな力をもっていた。1947年法務庁の設置により廃止。

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世界大百科事典(旧版)内の司法省の言及

【弾正台】より

…70年には大阪にも出張所を置いた。71年7月廃止され,司法省にひきつがれた。【田村 貞雄】。…

【法務省】より

…なお,行政組織上検察を包む体制となっており,また,裁判所との連絡や司法制度等をも担当している。 1871年(明治4)設置の司法省が1948年法務庁に,さらに49年法務府に改められ,52年法務省とされて今日に至っている。その内部組織は大臣官房および民事局,刑事局,矯正局,保護局,訟務局,人権擁護局,入国管理局の7局からなっている。…

※「司法省」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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