改訂新版 世界大百科事典 「国防献金」の意味・わかりやすい解説
国防献金 (こくぼうけんきん)
戦時に兵器の生産や軍人援護のために国民が軍に拠出した現金。満州事変の際は400万円に及ぶ恤兵(じゆつぺい)寄付金が陸軍に寄せられたが,拠出は必ずしも自発的なものばかりではなかった。1932年に各府県が愛国飛行機献納運動と称して取り組んだ献金運動は,地方行政機構が在郷軍人会や青年団の協力のもとに市町村から各戸へと負担額を半強制的に割り当てたものであった。新聞社も競って国民に献金を呼びかけた。また造船業の労働組合を中心に国防献金運動が進められ,33年6月にはこの運動を母体として日本主義労働運動の戦線統一組織である日本産業労働俱楽部が結成された。そして日中戦争,太平洋戦争期にはさらに行政的組織的な献金が強制され,国民にとっては戦争協力のための一種の税となっていた。
執筆者:功刀 俊洋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報