朝日日本歴史人物事典 「土佐与市」の解説
土佐与市
生年:宝暦8(1758)
江戸中期,紀州(和歌山県)の鰹節職人。本名善五郎。日高郡印南村出生。燻乾法鰹節「土佐節」製法を東日本一帯に広める礎を築いた。土佐浦へ出漁する印南鰹船団の職人であったが,天明年間(1781~89)飄然出郷。安房国朝夷郡南朝夷村(千葉県千倉町)渡辺久右衛門方に寄寓。その間,享和年間(1801~04)には伊豆国安良里へ渡り,両国へ土佐節製法を伝授。その製法は江戸末期までに奥州気仙沼方面へもおよび,東日本製品全般の品質改良の好結果を生んだ。文政の鰹節番付では,伊豆,安房産製品は土佐,薩摩,紀伊の製品の次に位置している。晩年帰郷の望みがかなえられず,渡辺家で死去したのは,土佐藩の禁を破って秘法を他郷へ洩らした故だと伝えられる。<参考文献>植田穂『改良土佐節の研究』
(宮下章)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報