土蜘蛛草子(読み)つちぐもぞうし

改訂新版 世界大百科事典 「土蜘蛛草子」の意味・わかりやすい解説

土蜘蛛草子 (つちぐもぞうし)

御伽草子。南北朝時代の作とされる絵巻1軸があり,詞は吉田兼好,絵は土佐長隆と伝える。詞9段,絵13段。源頼光渡辺綱を従えて洛北蓮台野に赴き,空中を飛ぶ髑髏(どくろ)を見てそのゆくえを追い,神楽岡に至る。古家に案内を乞うと,290歳という老女が出てくる。化け物が来たら斬り破ろうと2人が待つところへ,多くの異類異形(いるいいぎよう)が歩み来て,一度にどうと笑って去ったあと,色白く,面は2尺,丈1尺の化人(けにん)の尼や美しい女が現れる。頼光が美女に斬りつけると白い血だけを残して姿を消す。その血の痕をたどって,西山の方に遥かに分け入ると,洞穴の奥の古屋に,長さ20丈ばかりの化人が居た。それは〈山くも〉というもので,〈けむ〉の切れ目からは千九百九十九の死人の首が見える。頼光は,穴を掘ってくもの首を埋め,古屋には火をかけて去る。2人は帝から恩賞にあずかる。原本は東京国立博物館蔵,江戸期の模本が同館,神宮文庫などにある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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