日本大百科全書(ニッポニカ) 「在来産業」の意味・わかりやすい解説
在来産業
ざいらいさんぎょう
明治期に始まる日本の本格的な工業化の過程で、欧米から移植された近代的産業(機械制工業)と並存しながら発展した、工業化以前からの産業を在来産業という。近代産業の浸透により解体したものもあるが、伝統技術のなかに機械技術を取り入れ、地場産業として存続しているものも少なくない。
[殿村晋一]
1980年代以降、円高と新興工業国の台頭により、在来産業によって産出される生活雑貨等は輸入品に代替される傾向があり、壊滅的な影響を受けている日本の在来産業も多い。しかし、時代の変化に合わせ、伝統技術を新たな分野に活かして継続的発展を遂げている在来産業もある。たとえば新潟県燕(つばめ)市は、江戸時代から和釘(わくぎ)や煙管(きせる)、鑢(やすり)の産地であったが、その後、伝統的な金属加工技術を活かして金属洋食器の産地となり、さらにアウトドア用品をも産出している。
[鹿住倫世]