新興工業国(読み)しんこうこうぎょうこく(英語表記)newly industrialized country; NIC

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新興工業国」の意味・わかりやすい解説

新興工業国
しんこうこうぎょうこく
newly industrialized country; NIC

20世紀終わりから 21世紀始めにかけて,国の経済活動の主体農業から製造業や建設業,鉱業などへと移行させた国の総称。複数形で新興工業諸国 NICsとも呼ばれる。他国と活発に貿易し,発展途上国よりも高い生活水準にあるが,先進国アメリカ合衆国や日本,西ヨーロッパなどの地域の経済発展の水準にはまだ到達していない国である。20世紀後半,ホンコン特別行政区大韓民国(韓国),シンガポールタイワン(台湾)などで急速な産業成長がみられ,NICsが認識され始めた。トルコタイマレーシアメキシコブラジルアルゼンチン南アフリカ共和国ロシア中国インドなどの国々も,20世紀終わりから 21世紀初頭に産業発展を遂げた。どの国も国民 1人あたりの所得はおおむね増加したが,必ずしも産業の開発状況を反映するとはかぎらない。たとえば,インドや中国は人口が多いため,めざましい経済成長や製造部門の大規模化を実現したにもかかわらず,1人あたりの所得は低い。NICsにおける産業化や経済成長の過程は国によってさまざまで,インドでの輸入代替(→輸入代替工業化政策),台湾や韓国での輸出指向の成長(→輸出指向工業化政策),ロシアでの化石燃料採掘への投資,中国での対内投資の誘致などがあげられる。共通する特徴もいくつかあり,人権の拡大と市場自由化を可能にする政治的・経済的改革,産業の競争民営化を促進する法的・経済的環境の強化,輸出入の増加や国境をこえた投資を可能にする貿易自由化政策などである。NICsの国々のほとんどで,産業発展は,貿易の増加,経済成長の拡大,地域的な貿易圏への加入,特に先進国からの外国投資の誘致につながった。(→BRICS

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「新興工業国」の意味・わかりやすい解説

新興工業国
しんこうこうぎょうこく

中進国

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世界大百科事典(旧版)内の新興工業国の言及

【南北問題】より

…その一つは,旧来の国際分業体制の変革により北の世界が不況になり,南北対話が停滞し,先進国側の〈援助疲れ〉が顕在化したことである。今一つは,南グループの内部で,資源に恵まれた国々,また工業化を急速にすすめることに成功した新興工業国newly industrializing countries(NICs,また新興工業地域NIEs)などの経済的地位は著しく高まったが,南の人口の約7割を占める非産油発展途上国は,石油価格上昇,それに引き続く工業製品価格上昇のダブルパンチを受け,大きな経済困難に陥ったことである。とりわけアフリカやLDC(後発発展途上国)諸国の経済困難は深刻化した。…

【NIEs】より

…新興工業経済群Newly Industrializing Economiesの略。1970年代の石油危機後の世界的な経済の低成長の中にあって,急速な経済成長を続ける発展途上国を指してOECD(経済協力開発機構)が新興工業国Newly Industrializing Countries(NICs。ニクス)と名付けた。…

※「新興工業国」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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