改訂新版 世界大百科事典 「地球自由振動」の意味・わかりやすい解説
地球自由振動 (ちきゅうじゆうしんどう)
free oscillations of the earth
鐘をつけば鐘が固有の音で鳴るように,地球を振動させると,特定の振動数の振動,すなわち固有振動のみが発生する。これを地球自由振動と呼ぶ。巨大な地震が発生すると,数週間もの間,地球全体が振動しつづける。この振動は長周期地震計によって記録される。鐘の音の高低が鐘の弾性や密度によるのと同様に,地球自由振動の周期は地球の内部構造によって決まる。地球の自由振動は1960年チリ地震の際に初めて観測され,それ以後,地球内部構造の研究や地震の震源における運動の研究に用いられている。
地球自由振動には体積変化を伴う伸び縮み振動と,体積変化を伴わないねじれ振動とがあり,それぞれ無限の振動様式をもつ。地震の実体波も表面波も,異なる様式の自由振動の重ね合せにすぎない。P波,SV波,レーリー波は伸び縮み振動に,SH波,ラブ波はねじれ振動に対応する。振動の様式は,地球の半径方向の節の数lと,地表の振幅分布を表す球関数の次数nとによって表現される。l=0の場合を基本振動,l≧1を高次振動と呼ぶ。地球がラグビーボール形に変形する伸び縮み振動(l=0,n=2)は自由振動で最も長い周期(約54分)をもつ。ねじれ振動の周期も,l=2,n=2の場合に最も長く,約44分である。風船のように地球がふくらみ,つぼむ伸び縮み振動(l=n=0)の周期は約20分である。
執筆者:島崎 邦彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報