翻訳|hypocenter
一般には地震が発生した場所の意味で使われるが,専門用語としては,地震の原因である岩石の破壊(断層のずれ動き)の開始点を指す。地震波は震源域すなわち岩石が破壊した領域全体から発生するが,震源は震源域の中で地震波が最初に発生した点である。震源の位置は,その真上の地表の点(震央)の経度λ,緯度φ,および地表からの深さhの3個の数値によって表され,各地の地震計によって測った地震波の到着時刻から算出される。
震源位置の決定には,地球内部における地震波(P波とS波)の速度の分布がわかっていなければならない。仮にP波速度とS波速度が地球内部の場所によらず一定とすれば,ある地点にP波が到着してからS波が到着するまでの時間(S-P時間または初期微動時間という)は,震源までの直線距離(震源距離)に比例する。すなわち,震源距離=定数×(S-P時間)という式が成り立ち,比例定数は8km/s程度である。この式を大森公式という。この場合には,三つの地点でS-P時間を測定すれば,それぞれに対応する震源距離を半径とする三つの球面の交点として震源が定まる。しかし,実際には地震波の速度は深さとともに増大するので,この方法ではごく近似的な位置が求まるにすぎない。
震源決定にはこのほかいろいろな方法があるが,次に現在もっとも広く用いられている方法を説明する。地球内部のP波速度,S波速度を深さのみの関数として与えると,これから深さhの震源から出たP波,S波が震央距離⊿(震央から地表に沿って測った距離)の地点に到着するのに要する時間T(走時という)とその⊿およびhに対する変化率∂T/∂⊿,∂T/∂hが計算される。いま震源位置と震源における地震発生時刻を適当に仮定すれば,震央距離⊿の地点に地震波が到着すべき時刻tcが計算できる。もし仮定した震源位置と発生時刻が正しければ,tcは観測された到着時刻t0と一致するはずであるが,仮定した震源の経度がδλ,緯度がδφ,深さがδh,発生時刻がδtだけ違っているためtc-t0は0にはならない。このとき,tc-t0=(∂T/∂λ)δλ+(∂T/∂φ)δφ+(∂T/∂h)δh+δtが成り立ち,∂T/∂λ=-(∂T/∂⊿)sinθcosφ,∂T/∂φ=-(∂T/∂⊿)cosθである(θは仮定した震央からみた観測地点の方位角で北から時計回りに測る。φは仮定した震央の緯度)。上のtc-t0を表す式は四つの未知数 δλ,δφ,δh,δtを含むから,4ヵ所の地点における観測があれば,四つの式を連立方程式として解いてこれら未知数を求めることができる。実際には5ヵ所以上の観測があるのがふつうで,このときは(t0-tc)2の総和を最小にするという条件(最小二乗法)で未知数を求める。このようにして得られたδλ,δφ,δh,δtの値を補正した震源位置,発生時刻を改めて仮の値とし,それに対するδλ,δφ,δh,δtを再び計算し,このような手続きを数回繰り返して,最終的な値を定める。
執筆者:宇津 徳治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
地震に伴う破壊が開始した場所。したがって震源域の中で最初に地震波が発生した場所である。実体波の到着時刻を各地の地震計で観測することにより震源の位置は推定できる。
[山下輝夫]
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(阿部勝征 東京大学教授 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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