震源(読み)シンゲン(その他表記)hypocenter

翻訳|hypocenter

デジタル大辞泉 「震源」の意味・読み・例文・類語

しん‐げん【震源】

地震の際、地球内部で、最初地震波を発生した点。→震源地震央
ある事件などの起こったもと。また、そのもととなる人。「うわさ話の震源
[類語]地震地動ちどう余震揺り返し無感地震有感地震大地震だいじしん大地震おおじしん大震震災震央震源地震度微震軽震弱震中震強震烈震激震

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精選版 日本国語大辞典 「震源」の意味・読み・例文・類語

しん‐げん【震源・震原】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 地下における地震の発生した起点。震源域の中で最初に地震波が発生した地点。便宜上、一点とみなすもので、実際は空間的広がりを持つ。→震源域
    1. [初出の実例]「測候所長同県属井上龍太郎氏を同国根尾谷へ派遣し震原を実査せしめられしが」(出典:風俗画報‐三五号(1891)尾濃震災記事)
  3. ある事件や騒動などが起こるもと。

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改訂新版 世界大百科事典 「震源」の意味・わかりやすい解説

震源 (しんげん)
hypocenter

一般には地震が発生した場所の意味で使われるが,専門用語としては,地震の原因である岩石の破壊(断層のずれ動き)の開始点を指す。地震波は震源域すなわち岩石が破壊した領域全体から発生するが,震源は震源域の中で地震波が最初に発生した点である。震源の位置は,その真上の地表の点(震央)の経度λ,緯度φ,および地表からの深さhの3個の数値によって表され,各地の地震計によって測った地震波の到着時刻から算出される。

 震源位置の決定には,地球内部における地震波(P波とS波)の速度の分布がわかっていなければならない。仮にP波速度とS波速度が地球内部の場所によらず一定とすれば,ある地点にP波が到着してからS波が到着するまでの時間(S-P時間または初期微動時間という)は,震源までの直線距離(震源距離)に比例する。すなわち,震源距離=定数×(S-P時間)という式が成り立ち,比例定数は8km/s程度である。この式を大森公式という。この場合には,三つの地点でS-P時間を測定すれば,それぞれに対応する震源距離を半径とする三つの球面の交点として震源が定まる。しかし,実際には地震波の速度は深さとともに増大するので,この方法ではごく近似的な位置が求まるにすぎない。

 震源決定にはこのほかいろいろな方法があるが,次に現在もっとも広く用いられている方法を説明する。地球内部のP波速度,S波速度を深さのみの関数として与えると,これから深さhの震源から出たP波,S波が震央距離⊿(震央から地表に沿って測った距離)の地点に到着するのに要する時間T(走時という)とその⊿およびhに対する変化率∂T/∂⊿,∂T/∂hが計算される。いま震源位置と震源における地震発生時刻を適当に仮定すれば,震央距離⊿の地点に地震波が到着すべき時刻tcが計算できる。もし仮定した震源位置と発生時刻が正しければ,tcは観測された到着時刻t0と一致するはずであるが,仮定した震源の経度がδλ,緯度がδφ,深さがδh,発生時刻がδtだけ違っているためtct0は0にはならない。このとき,tct0=(∂T/∂λ)δλ+(∂T/∂φ)δφ+(∂T/∂h)δh+δtが成り立ち,∂T/∂λ=-(∂T/∂⊿)sinθcosφ,∂T/∂φ=-(∂T/∂⊿)cosθである(θは仮定した震央からみた観測地点の方位角で北から時計回りに測る。φは仮定した震央の緯度)。上のtct0を表す式は四つの未知数 δλ,δφ,δh,δtを含むから,4ヵ所の地点における観測があれば,四つの式を連立方程式として解いてこれら未知数を求めることができる。実際には5ヵ所以上の観測があるのがふつうで,このときは(t0tc2の総和を最小にするという条件(最小二乗法)で未知数を求める。このようにして得られたδλ,δφ,δh,δtの値を補正した震源位置,発生時刻を改めて仮の値とし,それに対するδλ,δφ,δh,δtを再び計算し,このような手続きを数回繰り返して,最終的な値を定める。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「震源」の意味・わかりやすい解説

震源
しんげん
focus; hypocenter

地震の発生した場所。すなわち,地震波の放射源であり,最初に断層の破壊(→ずれ)が始まった点をさす。震源断層には空間的な広がりがあり,その大きさに対応する領域を震源域という。断層の破壊は破壊開始点から一方向に伝わることが多いため,震源は震源域の中央ではなく,周縁にある場合も多い。震源の真上にある地表の点を震央といい,震源から地震の観測点までの距離を震源距離という。震源距離は,地震学者の大森房吉が提唱した,震源距離(km)を d ,観測点に遅く到着する S波と早く到着する P波の時間差である初期微動継続時間(秒)を t ,P波の速さ(秒速)を Vpkm,S波の速さ(秒速)を Vskm とした場合の大森公式で求められる。また,上記の k に置き換えて dk t とすることもできる。1918年,大森は k の値 7.42を算出し,d =7.42t とした。なお,三つ以上の観測点の初期微動継続時間(PS時間)がわかれば,震源の位置(深さ)や震央の位置がわかる。震源域は大きな地震ほど大きくなり,放射される地震波の波長も大きくなる。特に海底でのプレート境界地震巨大地震に発達する可能性が大きく,その震源域の広がりに伴って余震域や津波波源域も大きくなる。断層の破壊以外,たとえば火山噴火や地下のマグマ移動岩盤崩落核実験などによっても地震波は放射され,そのような地震波の発生源も震源という。また,爆薬等を人為的に用いて地震波を発生させる場合は自然現象と区別して人工震源ということがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「震源」の意味・わかりやすい解説

震源
しんげん

地震に伴う破壊が開始した場所。したがって震源域の中で最初に地震波が発生した場所である。実体波の到着時刻を各地の地震計で観測することにより震源の位置は推定できる。

[山下輝夫]

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百科事典マイペディア 「震源」の意味・わかりやすい解説

震源【しんげん】

地震の際,地中でそのエネルギーが発生したところ。一点ではなくある広がりをもつと考えられ,それを考慮に入れるときは震源域という言葉を用いる。発震時には,そこでは岩石の破壊が起こっており,地震のエネルギーは震源から地震波となって放出。
→関連項目震央

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知恵蔵 「震源」の解説

震源

最初に地震波が放出された1点を指す。震央とは震源の真上の地表の点をいう。震源の位置は震央の緯度、経度、震源の深さによって示される。震源は地下の破壊が最初に発生した点であり、実際には破壊の領域は震源から拡大する。破壊が生じた領域全体を震源域という。野島(のじま)断層が動いて発生した兵庫県南部地震の震源は淡路島北端の深さ14kmだったが、震源域は神戸市東方まで広がった。

(阿部勝征 東京大学教授 / 2007年)

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デジタル大辞泉プラス 「震源」の解説

震源

真保裕一の長編サスペンス小説。1993年刊行。地震の観測データに絡む国家的陰謀をテーマにしたサスペンス・ミステリー。

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