改訂新版 世界大百科事典 「塔寺」の意味・わかりやすい解説
塔寺 (とうでら)
福島県河沼郡会津坂下(あいづばんげ)町の大字。立木観音(千手観音,重要文化財)を本尊とし建久年間(1190-99)創建と伝える立木観音堂(恵隆寺(えりゆうじ)観音堂,重要文化財)と,塔寺八幡宮長帳(重要文化財)を蔵する塔寺八幡宮(心清水(こころしみず)八幡神社)がある。八幡宮長帳に門前における参詣人殺害事件の記事があり,また〈塔寺町〉〈町寺中〉とみえ,さらに1590年(天正18)伊達政宗が塔寺の神人(じにん)を従来どおり26人と定めているのによれば,八幡宮,観音堂門前の繁盛がうかがわれる。八幡宮と観音堂は会津の人々の信仰を集め,この社寺と門前を併せる塔寺町はその神人・衆徒たちによって維持運営されたものとみられる。1594年(文禄3)の蒲生領高目録帳では稲川郡に属し〈塔寺 四百廿八石八斗八升 御倉入〉とある。江戸期には河沼郡に属し,天保郷帳では623石余,文化・文政(1804-30)ごろの家数は88軒,村民の多くは旅籠屋や駄賃稼を行った。1923年の合体で八幡村の大字,55年会津坂下町の大字となる。
執筆者:小林 清治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報