…行政区画の単位で,大字と小字とがあり,ふつう,字というのは小字である。元来は狭い範囲の土地の名であった。…
…むらは中世から近世にかけて小農の家を構成単位とし,その生活・生産の共同と連帯の組織として登場し今日まで存在してきたものである。江戸時代の支配単位としての村が明治以降も解体することなく存続したのがむらであり,むらは江戸時代の村を地籍表示として継承した大字に一致するという理解が一般的であるが,しかし支配単位としての村から生活・生産の組織としてのむらを理解することは正しくない。江戸時代の村,したがって大字と生活・生産の組織としてのむらが一致するのは近畿地方や北陸地方ではごく普通であるが,近畿地方から東西に離れるにつれてしだいに一致しなくなり,江戸時代の村=大字の範囲にいくつものむらがある姿が通例となる。…
…組頭クラスの旧家に保存されている例も多い。また区有文書(旧村の多くは現在大字あるいは区と呼ばれている)として年々の区長宅に持回りされたり,区の倉庫や寺社に保管されている例もある。旧名主・庄屋や組頭が質屋や酒造業を営んでいたような場合には営業許可関係の公文書とともに私的な営業帳簿が残っていることがある。…
…そして,近世初頭の検地とそれに伴う村切は,百姓の耕作する田畑を必ずどこかの村に帰属させ,検地帳に登録したので,支配単位としての近世の村に属する田畑は地図に示すことができるようになり,その境界も明確となった。この範域は原則的に地租改正に引き継がれ,現在の大字(おおあざ)の範囲となっている。範域としての境界においても道祖神(どうそじん)がまつられたり,道切りが行われることもあるが,事例的には少なく,一般的には村境として強く意識されていない。…
※「大字」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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