千手観音(読み)せんじゅかんのん(英語表記)Sahasra-bhuja

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

千手観音
せんじゅかんのん
Sahasra-bhuja

千手千眼観音ともいわれる。六観音の一つ。千手を持ち,おのおのの手掌に目のある観音。千手は慈悲の広大を示し,千眼は化導の智が円満自在であることを表わす。餓鬼道に落ちている者を救う大悲観音で,普通は 42臂,27面の形像。眷属に二十八部衆がある。日本における千手観音の信仰は8世紀以来行われ,その像は全国的に多数分布している。8世紀の遺品としては,大阪葛井寺の乾漆造坐像,次いで9世紀前半と考えられる唐招提寺金堂の像がある。その他平安時代初期のものには広隆寺講堂,延暦寺の像など。また三十三間堂には,本尊の湛慶作の坐像を中心にその左右に各 500体ずつ,合計 1001体の千手観音像があり,その大部分が鎌倉時代建長年間に造られ,壮観をきわめる。遺品の多くは手の数を省略して 42臂のものが多いが,葛井寺,唐招提寺など初期のものには実際に 1000本の手をもつものもある。

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デジタル大辞泉の解説

せんじゅ‐かんのん〔‐クワンオン〕【千手観音】

《「千手千眼観世音」の略》六観音七観音の一。衆生(しゅじょう)をあまねく済度(さいど)する大願を千本の手に表す観音で、千は無量円満を表す。ふつう42の手を持つ像につくる。
《頭部の近くに足がかたまって生えているのがの姿に似ているところから》シラミ俗称

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百科事典マイペディアの解説

千手観音【せんじゅかんのん】

千手千眼・千臂(せんぴ)千眼観音とも。すべてのものを同時に見,同時に救う働きをもつ。普通は42臂,27面の像で表される。延命・滅罪・除病の功徳があると信じられ,日本では奈良時代から信仰される。唐招提寺の木彫像は実際に千手である。
→関連項目大谷磨崖仏粉河寺縁起絵巻湛慶

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世界大百科事典 第2版の解説

せんじゅかんのん【千手観音】

サンスクリットSahasrabhuja‐arya‐avalokiteśvaraの訳で,千手千眼観自在とも,あるいは大悲観音,千臂(せんぴ)観音とも称する。変化観音の一つで,千手は慈悲の広大を,千眼は化導の智が円満自在であることを表す。衆生済度にさし伸べる無数の手をもつ観音として,7世紀ころにインドヒンドゥー教の多面多臂像の影響をうけて成立したと考えられる。しかしインドには作例が見られず,西域,中国,日本においては雑密(ぞうみつ)時代から多くの作例を見うる。

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大辞林 第三版の解説

せんじゅかんのん【千手観音】

〘仏〙 六観音の一。限りない慈悲を表す菩薩で、千の慈悲の眼と千の慈悲の手をそなえ、生ある者を救うという。二七面四二臂の像が一般的。千手千眼観自在菩薩。千手千眼観世音。千眼千臂観世音。
〔足が多く生えているのがの姿に似ていることから〕 シラミの俗称。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

千手観音
せんじゅかんのん

観音菩薩(ぼさつ)の変化(へんげ)像の一つ。サンスクリット語ではアバローキテーシュバラ・サハシュラブジャローチャナAvalokitvara-sahasrabhujalocana。詳しくは千手千眼(せんげん)観音という。すなわち五重二十七面の顔と一千の慈眼をもち、一千の手を動かして一切衆生(いっさいしゅじょう)を救うという大慈(だいじ)大悲の精神を具象している。観音菩薩は大きな威神力をもち世間を救済するという期待が、この千手観音像を成立させたと考えられる。その千手のうち四十二臂(ひ)には印契器杖(いんげいきじょう)を持ち、九五八臂より平掌が出て、宝剣、宝弓、数珠(じゅず)などを持っている。経典としては『千臂千眼陀羅尼(だらに)』など11種のものがあり、いかに千手観音に対する信仰が盛んであったかを示す。造像のうえでは千手ではなく、四十二手像に省略されることが多い。さらに二十八部衆という大眷属(けんぞく)を従え、これらは礼拝(らいはい)者を擁護するという。[壬生台舜]

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精選版 日本国語大辞典の解説

せんじゅ‐かんのん ‥クヮンオン【千手観音】

[1] (千手千眼観自在菩薩の略称) 観世音菩薩があまねく一切衆生を救うため、身に千の手と千の目を得たいと誓って得た姿。千は満数で、目と手はその慈悲と救済のはたらきの無量無辺なことを表わしている。六道に対応する六観音の一つともされ、この場合、餓鬼道または天道に配する。形像は立坐の二様で、一面三目または十一面(胎蔵界曼荼羅では二十七面)、四十二の大きな手をそなえ、各手の掌に一眼をつけ、それぞれ持物を執るか、印を結ぶ。この菩薩の誓いは一切のものの願いを満たすことにあるが、特に虫の毒・難産などに秀でており、夫婦和合の願いをも満たすという。千手。千手千眼。千手観世音。千手千眼観世音菩薩。千眼千臂観世音。
※霊異記(810‐824)中「千手観音の像に憑(よ)り敬ひ、福分を願ひて、大富を得る縁」
[2] 〘名〙
① (頭部の近くに、足がかたまって生えているのが、(一)の姿に似ているところから) 「しらみ(虱)」の異名。
※浄瑠璃・平仮名盛衰記(1739)三「イヤおらが虱より此ふとんはどふやらうぢうぢ。千(せン)手観音(クンオン)はおらぬかや」
② 物乞いの一つ。背中に千手観音を背負い、錫杖(しゃくじょう)や鐘を打ちならしながら門付けをして歩くもの。子そだて、安産祈願などをした。
③ 小児の遊戯の一つ。小さな児を背中合わせにおぶって「千手観音、千手観音」と呼び歩く遊び。
※東京風俗志(1899‐1902)〈平出鏗二郎〉下「小いさき児を背合せに負いて、千手観音と呼びあるくもあれば」

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世界大百科事典内の千手観音の言及

【シラミ(虱∥蝨)】より

…古名はまたキササ,その字〈虱〉から半風子(はんぷうし)とも称する。さらにその形から千手観音という異称もあったことが横井也有の《百虫譜》などにも見え,第2次大戦後の大発生期には隠語風にホワイトチイチイと呼ばれた。ノミとシラミはともに人間に寄生して吸血し,かゆみを与えるために,よく対にして扱われるが,ノミが昆虫の中でももっとも進化したものであるのに対し,シラミはもっとも原始的な昆虫の一つである。…

※「千手観音」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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