改訂新版 世界大百科事典 「天体位置表」の意味・わかりやすい解説
天体位置表 (てんたいいちひょう)
Japanese Ephemeris
日本の天体暦。諸天体の位置およびその運動に伴う天文諸現象の予報を掲げている。1943年海軍水路部の創刊,現在海上保安庁水路部が発行している。内容は2部に大別され,第1部は地球,惑星,四大小惑星の日心,月の地心黄道座標,またそれらの赤経,赤緯,視差および恒星の平均位置,歳差,章動などを掲げる。第2部は天文現象で日・月食,星食,日・月出没時刻などの予報,春分,夏至などの二十四節気と雑節,曜日など。《天体位置表》の用途は航海暦や常用暦の編集,天文観測の準備,測量や宇宙活動の基礎資料など多様である。天文学の分野でもっとも重要な役割は,記載された位置を観測と比較することによって位置の推算の根拠となった力学理論と諸定数を検証することである。基本暦はそれまでに行われたすべての天文観測および天体の運動に関する研究の成果を活用して,つねに最高の精度で維持されなければならないが,一方では各国が異なる天体暦を用いることによる無用の混乱を避ける必要もあり,60年以後は,基本暦に用いる天文定数系と運動理論を国際天文学連合が決議することになっている。
執筆者:森 巧
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報