航海者が天文航法によって船舶の位置を決定するのに必要な天体の位置を記した暦書。航空機用のものは航空暦という。航海者は、動いている船上でその位置を速やかに決定しなければならないため、天体暦から、とくに航海に便利なように時間間隔を細分した時刻に対して、太陽・月・惑星・明るい恒星(主として1等星)のグリニジ時角と赤緯、太陽・月の出没時刻、正中時刻が記載されている。しかし航海暦は、天文家用の天体位置表に比べて、天体観測器として六分儀を使用するため、その記載精度は劣る。日本には、第二次世界大戦前は海軍水路部が天体暦から編纂(へんさん)した『天測暦』『天測略暦』があり、このうち『天測略暦』は航空用として1926年(大正15)以来刊行されたものである。第二次世界大戦後は海上保安庁海洋情報部(旧、水路部)から毎年出版されている。
[渡辺敏夫]
『巻幡竹夫著『天文航法』新訂版(1988・成山堂書店)』▽『長谷川健二著『天文航法』改訂新版(1994・海文堂出版)』▽『航海技術研究会編『練習用 天測暦』(2001・成山堂書店)』
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…まず航海技術の面について述べると,四分儀の代りにイスラム教徒から学んだアストロラーブが導入され,また簡単な測定用具としてヤコブの杖が使用された。また低緯度地域で太陽の高度から緯度を測定するための赤緯表を含む航海暦が編纂された。一方,実際の航海活動は国家の独占とされた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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