日本大百科全書(ニッポニカ) 「太陽電池用ガラス」の意味・わかりやすい解説
太陽電池用ガラス
たいようでんちようがらす
glass for photovoltaic panels
太陽電池を風、雨、雪、雹(ひょう)、ほこり、砂、塩などによる化学的・物理的劣化から守るためのカバーガラスと薄膜太陽電池用基板ガラスがある。カバーガラスは、太陽電池の光入射側に用いられる。一般の建築用ガラスは不純物として鉄を含んでいる。2価の鉄イオンは近赤外波長領域に、3価の鉄イオンは紫外波長領域に吸収を有しており、ガラスの透明性を下げる。カバーガラスの透明性を高めるため、不純物の鉄量を少なくするとともに、ガラス表面に反射防止処理を施している。また、機械強度を高めるために強化処理が施されている。薄膜太陽電池用基板ガラスは、スーパーストレートsuperstrate型とサブストレートsubstrate型電池に使用されている。サブストレート型は、ガラス基板の上に裏面電極、次に発電層、最後に透明導電膜を形成し、太陽光はこの透明導電膜側から入射するため、ガラスの透明性は重要でない。これに対し、スーパーストレート型は、ガラス基板上に透明導電膜、次に発電層、最後に裏面電極を形成し、太陽光はガラス基板側から入射するため、ガラスの透明性が太陽電池の効率を左右する。カバーガラス同様、スーパーストレート型に使用される太陽電池用ガラスも、透明性を高めるために不純物の鉄量を少なくしている。薄膜太陽電池材料として、薄膜Si(薄膜シリコン)、化合物半導体(銅、インジウム、セレンを原料とするCIS系、カドミウムとテルルからなるCdTe系)、色素増感タイプがある。地球温暖化やエネルギー消費量の伸びから、太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーが今後重要となってくる。再生可能なエネルギーとして、とくに太陽電池は期待されており、発電効率向上や長期信頼性確保の点などで、ガラスの果たす役割は大きい。
[伊藤節郎]