六訂版 家庭医学大全科 「奇形腫」の解説
奇形腫(胚細胞性腫瘍)
きけいしゅ(はいさいぼうせいしゅよう)
Teratoma (Germ cell tumor)
(子どもの病気)
どんな病気か
奇形腫は最近では胚細胞性腫瘍と呼ばれ、生殖器ができる過程でその基になる胚細胞に発生する腫瘍の総称で、良性、悪性のものを含みます。腫瘍は、体の組織のさまざまな成分が混じり合っています。女児の卵巣、男児の精巣にできるほか、体の中心線にそって発生し、お尻の骨の
部位によって年齢の分布や悪性の占める割合および組織の型が大きく異なります。新生児期では仙尾部や後腹膜に、2歳以下の乳児期では精巣に、学童や思春期では卵巣および縦隔にみられる傾向があります。悪性の奇形腫は、腹部リンパ節、肺、骨などに転移します。
症状の現れ方
卵巣の奇形腫は下腹部のしこりとして気づかれますが、腹痛や腹水、膀胱、直腸がしこりに圧迫されて
悪性奇形腫は
治療の方法
悪性奇形腫は、精巣などの部位では、比較的早期に見つかり、転移がなく完全摘出が可能な場合には手術をします。その後は無治療で慎重に経過を観察します。ほかの部位は完全摘出が難しいことが多く、抗がん薬の治療で腫瘍の縮小を待ってから、全摘出を目指した機能温存の手術を行い、手術後も抗がん薬を使います。早期であれば治癒が期待できます。
良性の奇形腫では、完全に取り除くことで再発は少なくなります。
病気に気づいたらどうする
おむつ替えや入浴の時、おなかのしこり、精巣のはれ、お尻のこぶがないかどうかを観察してください。これらの症状や便秘、尿閉がみられたら、すぐに小児科を受診します。悪性奇形腫は肺やリンパ節に転移しやすく、早期発見・早期治療が大切です。
片岡 哲
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報