季節風貿易(読み)きせつふうぼうえき

旺文社世界史事典 三訂版 「季節風貿易」の解説

季節風貿易
きせつふうぼうえき

約半年の周期風向きの変わる季節風(モンスーン)を利用して行われた貿易
歴史上では,1〜2世紀ころの,地中海域〜紅海・ペルシア湾〜南インド地域で展開された貿易活動をさし,「パックス−ロマーナ」の経済的基盤の1つとなった。上記の海域における貿易活動のおもな担い手は,ギリシア系商人だった。それを示す代表的史料として,1世紀中ごろのエジプト在住のギリシア人が著した『エリュトゥラー海案内記』がある。なお同時期,この延長上で,南インド地域〜東南アジア地域を結ぶ季節風貿易も行われていた。この海域での活動はインド人やマレー・ポリネシアン系の商人によって行われ,当時の扶南の海港だったオケオ遺跡からは,中国の陶器などとともにローマ金貨が出土し,この季節風貿易の広がりを証明している。その後,8世紀からインド洋季節風貿易の担い手は,ダウ船を操るアラブ人やイラン人のイスラーム商人になった。なお,季節風を利用した広義の季節風貿易には,中国と東南アジア諸国との間の南シナ海貿易や,中国〜琉球〜日本をつなぐ東シナ海貿易なども含まれる。

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