国指定史跡ガイド 「安国寺甕棺墓群」の解説
あんこくじかめかんぼぐん【安国寺甕棺墓群】
福岡県久留米市山川神代にある墓群。筑後平野を流れる筑後川が高良山(こうらさん)の麓を過ぎて流れを西から南に変える地域、高良山の北方約2kmの南岸に所在する。遺跡は東西約60m、南北約90mのほぼ楕円形に広がっている。調査地で検出された遺構は、甕棺墓111基、土坑墓4基、竪穴(たてあな)4基、祭祀遺構17ヵ所。甕棺墓は、弥生時代中期を中心とした2つの石蓋甕棺以外は合口甕棺である。また、祭祀遺構は多量の丹(に)塗り土器が捨てられた土坑状のもので、そこからは筒形土器、開口・短頸・無頸の壺形土器、甕、高坏鉢(たかつきばち)形土器などの鮮やかな丹彩の土器がセットで検出された。この100個に及ぶ丹彩土器は甕棺墓地における祭祀の状況をうかがわせている。甕棺墓地はその範囲が限定され、おそらく全体では300基前後の基数であろうと推定されており、祭祀遺構も数地点の存在が確認された。このように九州における弥生時代の独特の墓制である甕棺墓とそれに伴う祭祀と祭祀用土器の実態が判明したことは、弥生時代の墓制を知るうえで重要であることから、1980年(昭和55)に国の史跡に指定された。久留米市文化財収蔵館に出土品などが展示されている。西日本鉄道天神大牟田線西鉄久留米駅から車で約15分。