安積沼(読み)あさかのぬま

改訂新版 世界大百科事典 「安積沼」の意味・わかりやすい解説

安積沼 (あさかのぬま)

読本。角書(つのがき)〈復讐奇談〉。山東京伝著。北尾重政画。1803年(享和3)刊。半紙本5冊,別名小幡小平次(こはだこへいじ)死霊物語》。京伝の2作目の長編読本で,歌舞伎俳優玉川歌仙,実は里見浪人安西喜内の息子喜次郎(のち山井波門と改名)の敵討苦心,そして大和郷士穂積家の娘鬘児(かつらこ)との恋を物語の主筋にし,近世初期に実在した俠客,俳優,名僧などの挿話を交えつつ,安積山伝説,絵姿女房民話,絞纈(こうけつ)城伝説等によって構成している。しかし,それに妻お塚と姦夫安達左九郎によって殺された俳優小幡小平次の亡霊の凄惨な復讐を書き加え,その怪奇的な作風が評判になった。京伝の伝奇小説の新境地をひらいた作品である。
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