安部谷古墳(読み)あべだにこふん

国指定史跡ガイド 「安部谷古墳」の解説

あべだにこふん【安部谷古墳】


島根県松江市大草町にある墳墓意宇(いう)川の南、大草の丘陵一帯は古墳が数多くあることで知られているが、安部谷古墳は丘陵北辺、意宇平野に向かって開けた安部谷に位置する横穴墓群である。横穴墓はこの谷をはさむ両側斜面の角礫(かくれき)凝灰岩の岩盤に、6ヵ所以上の支群に分かれて掘削されている。このうち標高25mの位置に並ぶ5穴が国の史跡である。1~5号の番号がつけられ、いずれも羨道(せんどう)部がなく、小型の玄室だけが残り、5号墓は築造途中とみられる。1~4号墓は玄室が平入りの四注式家形につくられ、床面の左右に棺床をもつ。1号墓は幅約2.7m、奥行き約1.88m、高さ約1.67mで、前室と奥室の複室構造。2、3号墓は単室で、四壁と天井の界線に突帯をほどこし、棟の線は浮き彫りなどの造作がなされている。副葬品として、須恵器(すえき)、子持壺、円筒埴輪(はにわ)、馬具の轡(くつわ)などが出土した。須恵器類から、横穴墓は6世紀後半に築造されたものと考えられている。玄室などの整った構造に特徴があり、類例のまれな後期横穴墓群である。1934年(昭和9)に国の史跡に指定された。JR山陰本線松江駅から一畑バス「風土記の丘入口」下車徒歩約30分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

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