宮怨吟曲(読み)きゅうえんぎんきょく

改訂新版 世界大百科事典 「宮怨吟曲」の意味・わかりやすい解説

宮怨吟曲 (きゅうえんぎんきょく)

ベトナムの長編詩。グエン・ザ・ティエウNguyen Gia Thieu(阮嘉韶。1741-98)によって書かれた。漢字とチュノムを混用し,脚韻と腰韻を踏み,平仄式をもつ七言2句と六言,八言各1句のスタンザを連環する双七六八体詩で,356句から成る。ドアン・ティ・ディエム(段氏点)の《征婦吟曲》とともに,双七六八体詩の代表的作品とされる。皇帝の寵愛を失った後宮嬪妾の嘆きと回想を,仏教的現世観をまじえた独白で歌ったもの。ティエウは達武侯グエン・ザ・クー(阮嘉琚)とチン(鄭)氏第7代安都王チン・クオン(鄭棡)の娘,瓊璉公主の子で,その出自からこの詩が身辺の女性をモデルにした作品であるとする説もある。ティエウはレ(黎)朝顕宗の校尉管侍衛から興化処留守に昇り温如侯に封ぜられたが,政務を顧みず詩文と天文に没頭した。仏教,道教にも詳しく,レ朝末の詩学派の指導者と仰がれたが,タイソン(西山)党革命によるチン氏滅亡時に官を捨てて隠棲して捕らえられ,ハノイで病没した。漢詩集《温如前後集》,チュノムを用いた国音詩集《西湖詩集》と《四斎詩集》もある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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