宮本武蔵(小説)(読み)みやもとむさし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「宮本武蔵(小説)」の意味・わかりやすい解説

宮本武蔵(小説)
みやもとむさし

吉川英治の長編小説。1935年(昭和10)8月~39年7月、東京・大阪『朝日新聞』に連載。36~39年、大日本雄弁会講談社刊。全六巻。美作(みまさか)国(岡山県)吉野郷宮本村の郷士新免無二斎(しんめんむにさい)の子武蔵(たけぞう)は、17歳のとき功名心に燃え、幼友達の本位田又八(ほんいでんまたはち)と関ヶ原の戦いに参加して敗北、人間存在の小ささを覚(さと)り、沢庵和尚(たくあんおしょう)のもとで修行後、剣の求道者を志して旅に出る。お通と朱実(あけみ)、又八と武蔵(むさし)の対比、また吉岡清十郎や佐々木小次郎との対決など興味ある事件をあしらいながら、従来の剣豪としての武蔵像を改め、剣禅一如の境地を求めてやまない青年武蔵の人間形成への精進に光をあて、一種の教養小説として、広く迎えられた。

尾崎秀樹

『『宮本武蔵』全六冊(講談社文庫)』

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