デジタル大辞泉
「精進」の意味・読み・例文・類語
そう‐じ〔サウ‐〕【▽精▽進】
「そうじん」の撥音の無表記。
「―などせざらむ人々は、便なくや」〈狭衣・二〉
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しょう‐じんシャウ‥【精進】
- 〘 名詞 〙 仏語。
- ① ( [梵語] vīrya の訳。毘梨耶とも音訳 ) ひたすら仏道修行にはげむこと。また、その心のはたらき。
- [初出の実例]「凡僧尼〈略〉其有二乞食者一。三綱連署。経二国郡司一。勘二知精進練行一判許」(出典:令義解(718)僧尼)
- 「寸陰をすごさず、精進弁道すべし」(出典:正法眼蔵(1231‐53)礼拝得髄)
- [その他の文献]〔勝鬘経‐摂受章〕
- ② 転じて、一定期間、言語・行為・飲食を制限し、身をきよめて不浄を避けること。物忌みすること。潔斎すること。精進潔斎。
- [初出の実例]「今日釈迦仏日、始以二精進一、為レ報二恩徳一」(出典:小右記‐長保元年(999)一一月三〇日)
- 「徳大寺殿〈略〉俄に精進はじめつつ、厳嶋へぞ参られける」(出典:平家物語(13C前)二)
- ③ 一般に、魚や肉類を食べないで菜食すること。また、その料理。
- [初出の実例]「牛房といへる精進の菜あり」(出典:名語記(1275)三)
- 「精進(シャウジン)と魚類あらば、精進を先に、魚類をあとに出す也」(出典:甲陽軍鑑(17C初)品四四)
- ④ 一所懸命に努力すること。
- [初出の実例]「でうすの御ほうこうにしゃうじんになりはじむるときは」(出典:こんてむつすむん地(1610)二)
- ⑤ 品行をよくすること。女色をつつしむこと。
- [初出の実例]「精進(セウジン)がわるいさかい、コリャ雨じゃあろぞいの」(出典:滑稽本・東海道中膝栗毛(1802‐09)六)
そう‐じサウ‥【精進】
- 〘 名詞 〙 ( 「そうじん」の撥音「ん」の無表記 ) =そうじん(精進)
- [初出の実例]「ただいもひさうじをし給て、ただこそにあひみんとのみおこなひ給ふ」(出典:宇津保物語(970‐999頃)忠こそ)
- 「たゆまるるもの、さうじの日のおこなひ」(出典:枕草子(10C終)二六)
せい‐しん【精進】
- 〘 名詞 〙 精力をつくしてつとめはげむこと。一生懸命に努力すること。しょうじん。
- [初出の実例]「現代精神の権化たらん事を期して努力精進(セイシン)せねばならぬと思はれた」(出典:搦手から(1915)〈長谷川如是閑〉殿さまお目ざめ)
- [その他の文献]〔世説新語‐術解〕
そう‐じんサウ‥【精進】
- 〘 名詞 〙 ( 「さう」は「しゃう」の直音表記 ) 肉食をしないで、身を清めて善行に努めること。しょうじん。そうじ。
- [初出の実例]「一日ばかりのさうじん解斎(げさい)とやいふらん」(出典:枕草子(10C終)二五)
しょう‐じシャウ‥【精進】
- 〘 名詞 〙 ( 「しょうじん」の撥音「ん」の無表記 ) =しょうじん(精進)
- [初出の実例]「ながきしゃうじもはじめたる人、山寺にこもれり」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
精進 (しょうじん)
サンスクリットのビールヤvīryaの訳。ひたすらに努力し,励むこと。とくに,仏教の修行に日夜励むことと,その心のはたらきを意味している。大乗仏教の修行徳目の六波羅蜜(ろくはらみつ)や十波羅蜜中の一つで,それら全体における心がまえのことである。その精進波羅蜜は,菩薩(ぼさつ)(仏の位に到達する直前の位の修行者)が修行において勇猛で,怠りの心と行いがまったくないこと,すなわち精進の完成を指している。そのほか,仏教教理ではもっと細かな意味にも用いられている。このように本来は仏教用語である精進が,日本で一般にも広く用いられるようになったのは,経典中の説話を題材にした《日本霊異記》や《今昔物語集》などの物語や鏡(かがみ)類の影響によるものと思われ,語尾の〈ん〉を落として〈しょうじ〉〈そうじ〉ともいわれた。仏道修行に努力するという本来の意味から転じて,一般の人々が日常生活において努力することを意味するようになった。たとえば,一定の期間を限って,行動や飲食をつつしみ,身心を清らかに保つことを〈精進潔斎(しようじんけつさい)〉といい,魚類,肉類を用いず菜食のみをとり,さらに香辛の野菜をもさけることも〈精進〉で,そうした料理を〈精進料理〉という。また,品行とくに女色をつつしむ意味にも〈精進〉が用いられている。精進の期間をすごして,普通の日常生活にもどることを〈精進明(しようじんあけ)〉などと呼んでいる。
→精進落し
執筆者:井ノ口 泰淳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
精進
しょうじん
ひたすら努力すること。悪を断ち善を実践し、ひたすら進み勤めること。梵(ぼん)語ビールヤvīryaの訳。漢訳仏典では毘梨耶(びりや)、毘離耶(びりや)と音写し、勤、精勤(しょうごん)などとも訳す。仏教の実践徳目である八正道(はっしょうどう)の一つ。のちに整理され、心の働きを示す四正勤(しょうごん)、五根、五力(りき)などにも数えられる。大乗仏教の基本である六波羅蜜(ろくはらみつ)の一つにあげられ重視された。日本では、身心を清めること、俗縁を断ち切って清浄にし、仏門の生活を送ることもいう。さらに一般には、魚、鳥、獣などの肉を食べない、純粋の菜食をいうようになった。
[石上善應]
仏道修行に励む意の仏教用語から転じて、祭前などの一定期間世俗から離れて心身を慎み不浄を避けることをいう。精進は火・食物・水の三つの要素に大別できる。浄衣を着用して精進屋に籠(こも)り、朝夕水垢離(みずごり)をとって身を清める。食事は別火(べっか)といって家族などとは別に清浄な火で調理したもので、肉食はもちろんのことニンニクなどの臭気の強いものを慎む。散斎(さんさい)(あらいみ)・致斎(ちさい)(まいみ)と区別して長期間籠ることもあるが、普通は1週間前ぐらいから始め、終われば精進落としをする。
[佐々木勝]
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精進【しょうじん】
サンスクリットのビーリヤの訳で,大乗仏教の実践徳目の一つ。悪事を断ち善行を修めるため雑念を去って勤めること。転じて心身を慎み酒肉を断つこと。神道では〈そうじ〉などとよみ物忌(ものいみ)と同意。神霊をまつる者は別火精進といって煮たきを別にし,精進屋を設けて居所を別にし,垢離(こり)をとるといって水で潔斎した。仏事では精進料理といって生臭(なまぐさ)物を忌むのに対し,神道では獣肉は忌むが魚はとることが多い。精進固めといって精進に入る前に魚肉を食べておき,精進の期間が終わると精進落しといって肉食し,弔いの後では四十九日にちなんで四十九餅(もち)などをつく。
→関連項目禁忌(民俗)|六波羅蜜
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精進
しょうじん
vīrya
勇気をもって努力する心の働きと行為。大乗仏教では6種または 10種の波羅蜜多を説くが,そのなかに精進波羅蜜多があげられ,求道者が修行のためにするひたむきな努力を重要な徳目としている。また精進の内容は種々に分類されるが,俗には,肉食などを慎むことを精進という。 (→八正道 )
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普及版 字通
「精進」の読み・字形・画数・意味
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