サンスクリットのビールヤvīryaの訳。ひたすらに努力し,励むこと。とくに,仏教の修行に日夜励むことと,その心のはたらきを意味している。大乗仏教の修行徳目の六波羅蜜(ろくはらみつ)や十波羅蜜中の一つで,それら全体における心がまえのことである。その精進波羅蜜は,菩薩(ぼさつ)(仏の位に到達する直前の位の修行者)が修行において勇猛で,怠りの心と行いがまったくないこと,すなわち精進の完成を指している。そのほか,仏教教理ではもっと細かな意味にも用いられている。このように本来は仏教用語である精進が,日本で一般にも広く用いられるようになったのは,経典中の説話を題材にした《日本霊異記》や《今昔物語集》などの物語や鏡(かがみ)類の影響によるものと思われ,語尾の〈ん〉を落として〈しょうじ〉〈そうじ〉ともいわれた。仏道修行に努力するという本来の意味から転じて,一般の人々が日常生活において努力することを意味するようになった。たとえば,一定の期間を限って,行動や飲食をつつしみ,身心を清らかに保つことを〈精進潔斎(しようじんけつさい)〉といい,魚類,肉類を用いず菜食のみをとり,さらに香辛の野菜をもさけることも〈精進〉で,そうした料理を〈精進料理〉という。また,品行とくに女色をつつしむ意味にも〈精進〉が用いられている。精進の期間をすごして,普通の日常生活にもどることを〈精進明(しようじんあけ)〉などと呼んでいる。
→精進落し
執筆者:井ノ口 泰淳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ひたすら努力すること。悪を断ち善を実践し、ひたすら進み勤めること。梵(ぼん)語ビールヤvīryaの訳。漢訳仏典では毘梨耶(びりや)、毘離耶(びりや)と音写し、勤、精勤(しょうごん)などとも訳す。仏教の実践徳目である八正道(はっしょうどう)の一つ。のちに整理され、心の働きを示す四正勤(しょうごん)、五根、五力(りき)などにも数えられる。大乗仏教の基本である六波羅蜜(ろくはらみつ)の一つにあげられ重視された。日本では、身心を清めること、俗縁を断ち切って清浄にし、仏門の生活を送ることもいう。さらに一般には、魚、鳥、獣などの肉を食べない、純粋の菜食をいうようになった。
[石上善應]
仏道修行に励む意の仏教用語から転じて、祭前などの一定期間世俗から離れて心身を慎み不浄を避けることをいう。精進は火・食物・水の三つの要素に大別できる。浄衣を着用して精進屋に籠(こも)り、朝夕水垢離(みずごり)をとって身を清める。食事は別火(べっか)といって家族などとは別に清浄な火で調理したもので、肉食はもちろんのことニンニクなどの臭気の強いものを慎む。散斎(さんさい)(あらいみ)・致斎(ちさい)(まいみ)と区別して長期間籠ることもあるが、普通は1週間前ぐらいから始め、終われば精進落としをする。
[佐々木勝]
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