宮氏(読み)みやうじ

改訂新版 世界大百科事典 「宮氏」の意味・わかりやすい解説

宮氏 (みやうじ)

南北朝期以降,備後国品治(ほんじ)郡を中心とし国内各地に一族を分出した豪族。藤原氏小野宮流と伝え,備後一宮の社家と同族と推測される。《太平記》には船上山(せんじようさん)に馳せ参じた備後武士に宮氏を伝え,1342年(興国3・康永1)伊予南軍を襲撃した足利尊氏方軍勢に宮兼信の参加を記す。一方46年(正平1・貞和2)以降に幕府使節にあてられた宮盛重があり,観応の擾乱(じようらん)には足利直冬(ただふゆ)に与(くみ)し,やがて尊氏方に復帰したが,兼信は終始尊氏方で一時備中守護に任じられた。幕府の御番帳に宮氏一族が3ヶ番に数名ずつ属して見え,その支配地も〈康正二年(1456)造内裏段銭幷国役引付〉によれば幕府料所の代官として備後国内の広域に散在していたと推測される。少なくとも前記兼信系と盛重系との2系統があり,本拠はともに品治郡新市あたりと推定されるが,前者の系統から有地(あるち)および宮法成寺が,後者の系統から久代(くしろ)宮および小奴可(おぬか)宮が分立し,後者は北部に支配を浸透させていたと推測される。前者の系統の宮上野介は1537年(天文6)尼子晴久軍に参陣し,のち神辺(かんなべ)城主山名理興に与したため,48年大内氏に滅ぼされた。盛重の系統も1541年ころ断絶したらしい。久代宮および小奴可宮は小奴可宮出身の策雲元竜の計らいで,有地氏とともに毛利時代に存続した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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