家中工業(読み)かちゅうこうぎょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「家中工業」の意味・わかりやすい解説

家中工業
かちゅうこうぎょう

江戸中期以降、家中武士および婦女子によって行われた家内工業をいう。諸藩では財政が苦しくなると、徹底した緊縮政策を実施するとともに、家中に対しては借知(しゃくち)を命じ、場合によっては俸禄(ほうろく)の半分しか与えない半知を命じて、なんとか財政危機を切り抜けようとした。ところが、借知は通年にわたって実施されることが多かったので、減俸による家中の生活は苦しく、なんらかの副業を余儀なくされた。その結果、家中の手工業的内職が行われることになった。例として、仙台、米沢(よねざわ)、小倉(こくら)、福岡藩における仙台平(せんだいひら)織、米沢織、小倉織、博多(はかた)織の生産や、弘前(ひろさき)藩の津軽塗、加納(かのう)藩(美濃(みの))の傘生産などがあり、これが一般に普及して、明治以降地方産業に発展した例も多い。

吉永 昭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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