津軽塗(読み)ツガルヌリ

デジタル大辞泉 「津軽塗」の意味・読み・例文・類語

つがる‐ぬり【津軽塗】

弘前市中心に産する漆器。中塗りの上に、漆に卵白ゼラチンなどをまぜ、へらや刷毛はけを用いて文様を表す絞漆しぼうるし法で凹凸を作ったあと、各種の色漆を塗り重ね、独特の砥石といし雲形斑紋模様を研ぎ出したもの。質は堅牢で耐久性がある。

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精選版 日本国語大辞典 「津軽塗」の意味・読み・例文・類語

つがる‐ぬり【津軽塗】

  1. 〘 名詞 〙 青森県弘前市付近から産出する漆工品。その代表的なものは唐塗で、彩漆(いろうるし)に卵白を混ぜ、特殊なへらで斑文をつけ、その上に各種の彩漆と透漆(すきうるし)を交互に塗り重ね、砥石で研(と)ぎ、蝋色仕上げをして、複雑な斑文を出したもの。七子(ななこ)塗、殻塗といわれる手法もある。
    1. [初出の実例]「青森は八百四十七点にして有名なる津軽塗諸織物竹細工等なり」(出典:風俗画報‐九四号(1895)工業館)

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改訂新版 世界大百科事典 「津軽塗」の意味・わかりやすい解説

津軽塗 (つがるぬり)

青森県津軽地方でつくられる漆器。寛文年間(1661-73)弘前藩津軽信政若狭の塗師(ぬし)を招請したところから始まったといい,藩の庇護の下におもに高級なあつらえ物を製作していたようである。明治維新によってその庇護を失った津軽塗工人は,1881年に漆器樹産会社などを設立して殖産振興を図った。素地はおもにヒバを用い,重箱,盆,卓など板物が多い。加飾技法のうち,もっとも特色があるものは唐塗(からぬり)である。これは青海(せいかい)源兵衛が創作したといわれ,色漆に卵白を混合した紋漆を特有の篦(へら)で塗って斑文をつけ,その上に各種の色漆を塗り重ねて研ぎ出したものである。そのほか菜種を蒔(ま)いてつくる七々子塗(ななこぬり),七々子塗の地に紗綾形(さやがた)と唐草をあしらった錦塗,炭粉を蒔いたつや消し地に光沢のある黒模様がはえる紋紗塗(もんしやぬり)などが行われている。堅牢で実用性に富んだ塗物として,津軽地方を代表する名産である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「津軽塗」の意味・わかりやすい解説

津軽塗
つがるぬり

青森県弘前(ひろさき)市を中心に生産される変塗りの漆器。江戸前期の寛文(かんぶん)年間(1661~73)に津軽藩が若狭(わかさ)国(福井県)の塗師(ぬし)池田源兵衛を召し抱えたことから始まり、その後を継いだ子の源太郎がさらにその基礎を固めた。非常に堅固な塗り物であるため、別名「馬鹿(ばか)塗」の名でも親しまれている。製品は座卓、重箱、盆、椀(わん)、箸(はし)、茶道具など生活用具が主体で、素地(きじ)には県特産のヒバ材が用いられる。素地に生漆(きうるし)を塗って下地とし、さらに地(じ)の粉(こ)・米糊(こめのり)・砥(と)の粉と生漆を混ぜたものを繰り返し塗り重ねる本堅地造(ほんかたじづくり)の製法が行われる。1975年(昭和50)伝統的工芸品産業振興法の認定を受けて以来、地方産業振興の一翼を担っているが、基本となる認定技法の上(うわ)塗りは、古技法とよばれる唐塗(からぬり)のほかに、七々子(ななこ)塗、紋紗(もんしゃ)塗、錦(にしき)塗の四技法が用いられており、いずれも凹凸をつけた下地に彩(いろ)漆を塗り重ね、地元産の大清石砥石で研ぎ出して文様を表すものである。

[郷家忠臣]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「津軽塗」の意味・わかりやすい解説

津軽塗
つがるぬり

青森県弘前市を主産地とする変り塗の漆器。塗りや研磨などの工程を 50回前後も繰り返すことから,俗に馬鹿塗ともいわれる。木地に幾度も入念な下地工程を施した堅牢な器などに彩漆(いろうるし)を塗り重ねて研ぎを繰り返し,唐塗,あるいは七々子塗(ななこぬり),紋紗塗(もんしゃぬり),錦塗と呼ばれる装飾文様を浮かび上がらせる。代表的な技法である唐塗は,卵白を混ぜた絞漆(しぼうるし)に穴の開いたへらで斑点模様をつけ,彩漆を塗り重ねては砥石や炭などで研磨することにより,切断面が独特の模様をつくる。江戸時代中期に弘前藩 4代藩主,津軽信政が塗師の池田源太郎(のちの青海源兵衛)を江戸に派遣し,青海太郎左衛門に師事させたことが,津軽塗の技法の考案につながったといわれる。なお,津軽塗の名は 1873年のウィーン万国博覧会に漆器を出展する際に青森県がつけたものである。1975年に国の伝統的工芸品に指定。

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百科事典マイペディア 「津軽塗」の意味・わかりやすい解説

津軽塗【つがるぬり】

青森県津軽地方に産する漆器。元禄ごろに漆工池田源兵衛の子源太郎が創始したと伝える。盆(ぼん),銘々皿,重箱などの板物が主。各種の色漆を不規則に塗り重ねて斑文をとぎ出す唐塗,ナタネの種子を用いて円文をつける魚々子(ななこ)塗などが行われている。

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「津軽塗」の解説

津軽塗[漆工]
つがるぬり

東北地方、青森県の地域ブランド。
現在の弘前市を中心に津軽地方で製作されてきた漆器。江戸時代初期、4代津軽藩主・津軽信政に召し抱えられた塗師・池田源兵衛が創始者と伝えられている。丈夫さと多彩な技法が特色。明治時代初頭、藩政期の伝統技術の蓄積を土台に産業として発展した。その後も時代のニーズにあわせながら創意工夫を凝らして技術を磨き、今日の津軽塗が築きあげられてきた。その堅牢さと優美さが高く評価される。青森県伝統工芸品。1975(昭和50)年5月、通商産業大臣(現・経済産業大臣)によって国の伝統的工芸品に指定。

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事典・日本の観光資源 「津軽塗」の解説

津軽塗

(青森県)
あおもり魅力百選」指定の観光名所。

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世界大百科事典(旧版)内の津軽塗の言及

【弘前[市]】より

…また商業の中心地として広い商圏をもっている。地場産業として,リンゴ加工や酒,みそ,しょうゆなどの食品工業があり,名産の津軽塗をはじめ,津軽焼,津軽こぎん(小衣),アケビづる細工などの伝統工芸も盛んである。春に弘前城跡の公園を中心に催される桜祭と夏に津軽地方一円で行われるねぷた祭(ねぶた)は最大の年中行事として全国に知られる。…

※「津軽塗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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