改訂新版 世界大百科事典 「宿紙上下座」の意味・わかりやすい解説
宿紙上下座 (しゅくしかみしもざ)
図書寮紙屋院の後身として蔵人所を本所に室町期に成立した座。特権として京中における紙漉業の独占権と課役免除を保持した。上下の2座から成り,主として綸旨(りんじ),口宣案(くぜんあん)などに不可欠な宿紙を貢納したところに名称の由来がある。上座は律令制下における図書寮紙屋院の紙工の系統の者によって組織され発展したもので,紙屋院廃絶以降の朝廷需要の宿紙などの紙類を製造するとともに,座の上位にある兄部(このこうべ)(統率者)のうち,例えば栂井氏などは世襲的に図書寮允,属官に補任されて恒例,臨時の朝儀の図書寮官人役を勤仕した。一方,下座は上座から分立したもので,当初は上座の下位にあったが,応仁・文明の乱による社会的混乱と下剋上の風潮の中から下座兄部小佐治氏が台頭し,天文年間(1532-55)には上座栂井氏と同じく小佐治氏が允官に補任されるに及んで両座の上下関係は事実上なくなったようである。以降この両家が図書寮允,属官を世襲し,宿紙座を統率して近世に至っている。
執筆者:櫛笥 節男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報