日本大百科全書(ニッポニカ) 「寄倍水」の意味・わかりやすい解説
寄倍水
よるべのみず
古社には神前に置く水甕(みずがめ)を寄瓮(よるべ)といい、それに入れた清水を寄倍水と称し、神霊がこの水に宿ると信じられている。鹿島(かしま)神宮には寄倍水とよぶ水甕が伝存し、摂津(大阪)の住吉(すみよし)大社では御手洗(みたらし)川を寄倍水とし、河内(かわち)(大阪)の誉田八幡(こんだはちまん)では池の名とし、京都の上賀茂には摂社片岡社の後方に「よるべの水」があって、その水の奇特は三世相を現すとの口伝(くでん)がある。古歌に「神さびてよるべにたまるあまみずのみくさゐるまで妹(いも)を見ぬかな」(奥義抄(おうぎしょう))、「稲荷(いなり)山御前(みまへ)の谷の底ふかみ神のよるべの杉の下水」(春葉集)などと詠まれている。
[菟田俊彦]