御手洗(読み)ミタラシ

デジタル大辞泉 「御手洗」の意味・読み・例文・類語

み‐たらし【御手洗】

神仏を拝む前に参拝者が手や口を洗い清める所。
御手洗会みたらしえ」の略。
御手洗川」の略。
「この清川と申すは、羽黒権現の―なり」〈義経記・七〉

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精選版 日本国語大辞典 「御手洗」の意味・読み・例文・類語

み‐たらし【御手洗】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 神仏を拝む前に、参拝者が手を清め、口をすすぐための場所。みたらい。
    1. [初出の実例]「みな人のくるにならひてみたらしのかはもたづねずなりにけるかな」(出典:いほぬし(986‐1011頃))
  3. みたらしがわ(御手洗川)」の略。
    1. [初出の実例]「神やせくしもにはみくづつもるらん思ふ心のゆかぬみたらし」(出典:蜻蛉日記(974頃)上)
  4. みたらしだんご(御手洗団子)」の略。
    1. [初出の実例]「饅頭としんことみたらしも安う売るとも損は煎餠」(出典:いろは歌教訓鑑(1819))
  5. みたらしえ(御手洗会)〔俳諧・毛吹草(1638)〕

お‐てあらい‥てあらひ【御手洗】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「お」は接頭語 ) 「てあらい(手洗」を丁寧にいう語。
    1. [初出の実例]「アラお嬢様…、お手洗でございますか」(出典:妹背貝(1889)〈巖谷小波〉冬)

み‐たらい‥たらひ【御手洗】

  1. 〘 名詞 〙みたらし(御手洗)
    1. [初出の実例]「周防むろづみの中なるみたらひに」(出典:十訓抄(1252)三)

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改訂新版 世界大百科事典 「御手洗」の意味・わかりやすい解説

御手洗 (みたらい)

安芸国(広島県)大崎下島の東端に形成された港町。西廻海運の潮待ち・風待ち廻船の寄港地。近世初頭の御手洗は豊田郡大長(おおちよう)村に属し,出作りによる農耕が行われていたが,沖乗りの発達とともに船舶の湾内係留が増えた1666年(寛文6)に町割りが行われた。その後も,土地の狭い御手洗では,町人の手で干拓が進んで船宿や商家,倉庫を中心に町並みが広がり,船の発着場の雁木(がんぎ)や,船番所もできて,港町として整備がはかられた。1713年(正徳3)には町年寄役の制をとり,西廻海運の盛行とともに,北国米を中心とする中継的問屋商業が展開された。町の戸口も1768年(明和5)106軒,543人,83年(天明3)241軒,1190人,1801年(享和1)302軒,1570人と18世紀後半以降急増している。これは他国船の寄港に依存する中継問屋商業から,鉄,紙,木綿など国産品の領外移出港としての機能拡大をはかったこと,さらに幕府船舶や,西国大名の公用船の寄港,接待場所として頻繁に利用されるようになったからである。港町繁栄策として富籤(とみくじ)や町出来銀の制が行われたりした。幕末には芸薩交易の貿易港が御手洗に指定され,広島藩から銅10万斤,鉄3000駄,米3万石,繰綿(くりわた)5000本,木綿2000丸,薩摩藩から生蠟(きろう),硫黄花,製糖用平釜,現金10万両など大規模な取引が成立している。1956年大長村などと合体し,豊(ゆたか)町(現,呉市)となった。
執筆者:


御手洗 (みたらし)

神仏を拝する前に,参拝者が体をきよめるため,手を洗い,口をそそいだ場所。伊勢神宮の五十鈴川のように,自然の川であることもあり,そうした場合にその川を御手洗川と呼ぶこともある。《義経記》に〈清川と申は,羽黒権現のみたらしなり〉とみえるのもその例である。世俗,日常の世界から神聖な社域,寺域に入るための(みそぎ)の行事と場所が簡略化された結果,成立したのが今日,各地の社寺にみられる御手洗であろう。京都北野天満宮の7月7日になされる御手洗祭は,祭神が歌を詠むので,そのための御手水(おちようず)を硯箱,水さしなどとともに神前に供えるのだとされるが,これは魂祭である盆を前にして禊が変容したものと思われる。同じ京都の賀茂御祖(かもみおや)神社には6月20日から晦日まで境内の御手洗川に人々が足をひたし息災を願った御手洗会(みたらしえ)があり,ただすまいりとも呼ばれていた。御手洗だんごはこのおりに売られたものであったという。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「御手洗」の意味・わかりやすい解説

御手洗
みたらい

広島県中南部、呉(くれ)市大崎下(おおさきしも)島東部の一地区。西廻(にしまわり)航路の重要な風待ち・潮待ち港として繁栄し、当時の遊女屋若胡子(わかえびす)屋や、三条実美(さねとみ)らの七卿落(しちきょうおち)遺跡(ともに県の史跡)がある。1994年(平成6)重要伝統的建造物群保存地区に選定された。

[編集部]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「御手洗」の意味・わかりやすい解説

御手洗
みたらし

神社の社頭にあり,参詣者が神に参拝する前に手を洗い,口をすすぐところ。川泉などの流水を用いるかあるいは手水舎 (ちょうずや) が設けられている。

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世界大百科事典(旧版)内の御手洗の言及

【瀬戸内海】より

… 瀬戸内海では17世紀半ばに西廻海運が整えられるまでは,山陽沿岸を通る地乗り航路が中心で,物資の交易,潮待ち,風待ちのため下関,尾道,鞆(とも),笠岡,下津井,牛窓などの港町が栄えた。それ以降は島嶼部を縫う沖乗り航路が主となり,木江(きのえ)(大崎上島),御手洗(みたらい)(大崎下島),鹿老渡(かろうと)(倉橋島)などの港町が発達した。明治以降は鉄道の発達によって沿岸航路が廃止されたところもあり,大型の汽船が普及してからは小規模な港町の多くは衰退した。…

【豊[町]】より

…1422年(応永29)の《小早川文書》には〈大条浦〉(現,大長(おおちよう)),〈興友浦〉(現,沖友)など町内の地名がみえる。南東端の御手洗(みたらい)は,近世には廻船などの寄航地としてにぎわい,町場が形成された。参勤交代の際に寄港する西国諸藩の大名も多く,その船宿や,遊女を抱えた茶屋もあった。…

【手水鉢】より

…多くは石造で,自然石をそのまま用いたもの,貝,舟,富士,一文字,棗(なつめ)などの形に加工したもの,また四方仏や五輪塔の水輪(下から2段目の石),橋杭などを利用したものがあり,銅製,陶磁器のものもある。神仏に詣でるときに手を清め口をすすぐ風習は古く,伊勢神宮や上賀茂神社には,川に石畳をしつらえて御手洗(みたらし)が設けられている。また神嘗祭(かんなめさい)でも御手洗の儀礼が行われていた。…

※「御手洗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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