奥義抄(読み)オウギショウ

デジタル大辞泉 「奥義抄」の意味・読み・例文・類語

おうぎしょう〔アウギセウ〕【奥義抄】

平安後期の歌学書。3巻。藤原清輔ふじわらのきよすけ著。天治元年(1124)から天養元年(1144)の間に成立。序と式(上巻)、釈(中・下巻)に分かれ、式は六義歌病などについて解説、釈は和歌語句注釈

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「奥義抄」の意味・読み・例文・類語

おうぎしょうアウギセウ【奥義抄】

  1. 平安後期の歌学書。三巻。著者藤原清輔(ふじわらのきよすけ)。保延元年(一一三五)から天養元年(一一四四)の間の成立。初稿以来数次にわたって増補された。序のほかに式(上巻)と釈(中・下巻)に分かれ、式は六義、六体以下歌病、所名に至る二五条について論述し、釈は古歌万葉、古今から後拾遺にいたる勅撰集の中の語句を注釈している。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「奥義抄」の意味・わかりやすい解説

奥義抄【おうぎしょう】

平安後期の歌学書。藤原清輔著。《詞花和歌集》に言及がなく,崇徳天皇に奉られていることから,初稿本の成立は保延年間(1135年―1141年)と考えられる。のち数度にわたり増補。六条家歌学を代表する著作の一つ。上巻は式の部,和歌六義以下25項目について論じる。中下巻は釈の部で例歌を挙げて難語の注釈をし,さらに24項の歌語・歌体について問答形式による詳細な考証を加える。《歌経標式》以来の歌学書の集大成であり,《袖中抄》《八雲御抄》等後世の歌学書への影響も大きい。《和歌九品》など散逸した書物から採録している点でも貴重である。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「奥義抄」の意味・わかりやすい解説

奥義抄
おうぎしょう

平安末期の歌学書。著者は藤原清輔(きよすけ)。1124年(天治1)から44年(天養1)の間の成立か。初め崇徳(すとく)天皇に奉り、その後追補して二条天皇に奉ったと伝える。清輔の追補は4次にわたったらしいことが、伝来写本の内容の相違によって知られる。いま第三次本の内容を概観すると、3巻よりなり、序文に次ぐ上巻は「式」と題して、六義(りくぎ)、六体、三種体、八品(はっぽん)、隠題(かくしだい)、四病、七病、八病、避病事(やまいをさくること)、詞病事(ことばのやまいのこと)、秀歌体、九品(くぼん)、十体、盗古歌、物異名(もののいみょう)、古歌詞、所名など歌学の25条の項目について述べて貴重である。中・下巻は「釈」として『後拾遺集』『拾遺集』『後撰(ごせん)集』、『古歌』(万葉集)、『古今集』の順序で語句の注釈を記し、下巻の末尾に24項目が問答体で述べられている。それまでの歌学を集大成した書として重要である。

[藤岡忠美]

『久曽神昇解題『日本歌学大系1』(1940・文明社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「奥義抄」の意味・わかりやすい解説

奥儀抄 (おうぎしょう)

平安後期の歌論。藤原清輔著。1124年(天治1)から44年(天養1)ごろに著され,はじめ崇徳天皇に,のちに増補して二条天皇に奉られた。3巻から成り,上巻には六義(りくぎ)や歌病(かへい)/(うたのやまい)などについて総論的に述べ,中・下巻には難しい歌語を注釈し,歌体についても論及する。歌語の注釈は,《古今集》歌を対象とするものが40%を占め,漢籍を主体とする諸書を博捜した考証に,歌門たる六条藤家の著作らしい特色がある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「奥義抄」の意味・わかりやすい解説

奥義抄
おうぎしょう

平安時代後期の歌学書。『奥儀抄』とも書く。藤原清輔 (きよすけ) 著。3巻。天治1 (1124) ~天養1 (44) 年の間に成立。崇徳天皇に献上ののち,数回増補されている。序で,和歌の効用や沿革などについて概括し,以下,式 (上巻) ,釈 (中,下巻) に分けて解説。式は歌の種類,歌病,歌体,本歌取,枕詞 (まくらことば) ,歌語,名所などについて記し,釈は『万葉集』から『後拾遺集』までの約 260首の歌について語句を中心に解釈する。平安朝歌学の集大成として,後続する歌学書に与えた影響は大きい。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の奥義抄の言及

【辞書】より

… またこの時代には和歌の学問がさかんになって,古歌の語が研究されるようになり,多くの歌論書が作られた。その中で,能因法師の《能因歌枕(うたまくら)》1巻,藤原仲実(なかざね)の《綺語(きご)抄》3巻,藤原清輔(きよすけ)の《奥儀(おうぎ)抄》3巻(天治~天養期(1124‐45)ころ成立),顕昭の《袖中(しゆうちゆう)抄》20巻(文治期(1185‐90)ころ成立),藤原範兼(のりかね)の《和歌童蒙(どうもう)抄》10巻(1135‐55(保延1‐久寿2)の間に成立)などの中には,歌語を集めて意味分類をし,それに解釈を加えた部分が含まれている。
[鎌倉・室町時代]
 平安時代の辞書の影響を受けながら,多くの辞書が新しく編まれた。…

※「奥義抄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android