対華二十一か条要求/対華要求に関する加藤外相訓令(抄文)(読み)たいかにじゅういっかじょうようきゅうたいかようきゅうにかんするかとうがいしょうくんれい

  • 対華二十一か条要求/対華要求に関する加藤外相訓令
  • 抄文

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

大正三年十二月三日附機密号外
             加藤大臣
  在京日置公使宛
    対支政策ニ関スル件
帝国政府ニ於(おい)テハ時局ノ善後ヲ図リ且(かつ)帝国将来ノ地歩ヲ鞏固(きょうこ)ニシテ以(もっ)テ東洋ノ平和ヲ永遠ニ保持センカ為此際支那政府トノ間ニ大体別紙第一号乃至(ないし)第四号ノ趣旨ノ条約及取極ヲ締結致度意図ニ有之右ノ内別紙第一号ハ山東(さんとう)問題ノ処分ニ係リ別紙第二号ハ大体南満洲及東部内蒙古(うちもうこ)地方ニ於ケル我地位ヲ明確ナラシムルノ趣旨ニ有之畢竟(ひっきょう)南満洲及東部内蒙古ニ関シテハ帝国ノ地位モ将又(はたまた)支那ノ地位モ共ニ甚不明確ナル点尠(すくな)カラサル為従来日支両国ノ間ニ無用ノ誤解猜疑(さいぎ)ヲ生シ延(ひい)テ両国ノ国民的感情ニモ多大ノ悪影響ヲ及ホシタルコト少カラサル次第ナルニ付帝国政府ニ於テハ南満洲及東部内蒙古ニ於ケル既成ノ事実ヲ茲(ここ)ニ明確ナラシムルト共ニ一面此機会ニ於テ帝国政府ニ於テハ所謂(いわゆる)満洲分割等同地方ニ対シ何等領土的野心ヲ包蔵セサルノ意志ヲ表白セントスルモノニ有之尤(もっと)モ南満洲及東部内蒙古ニ関シテハ先ツ別紙第二号甲案ニヨリ交渉ヲ開始相成度右ハ或ハ支那政府ノ承諾ヲ見ルコト困難ナルカトモ思考セラルルモ成ヘク右甲案通リノ我希望ヲ貫徹シ得ル様御折衝相成已(や)ムヲ得サルニ及テ別紙第二号乙案ニ拠(よ)ラルルコトト致度次ニ別紙第三号漢冶萍(かんやひょう)問題ニ関シテハ此際主義上ノ取極ヲ約シ置キ詳細ノ点ハ追テ協議決定スルコトト致度尚(なお)別紙第三号及第四号ハ必スシモ条約ノ形式ト為スヲ要セス或ハ公文ノ交換等ニヨルモ差支無之ニ付右ニ御承知相成度将又別紙第一号及第二号ノ条約及第三号及第四号ノ取極ハ何レモ支那側ニ於テ希望スルニ於テハ当分密約ト致シ置クモ苦シカラサル義ニ付是亦(これまた)御含置相成度シ(中略)

第一号
日本国政府及支那国政府ハ偏(ひとえ)ニ極東ニ於ケル全局ノ平和ヲ維持シ且両国ノ間ニ存スル友好善隣ノ関係ヲ益々鞏固ナラシメンコトヲ希望シ茲ニ左ノ条款ヲ締約セリ
 第一条 支那国政府ハ独逸(ドイツ)国カ山東省ニ関シ条約其他ニ依リ支那国ニ対シテ有スル一切ノ権利利益譲与等ノ処分ニ付日本国政府カ独逸国政府ト協定スヘキ一切ノ事項ヲ承認スヘキコトヲ約ス
 第二条 支那国政府ハ山東省内若(もし)クハ其沿海一帯ノ地又ハ島嶼(とうしょ)ヲ何等ノ名義ヲ以テスルニ拘(かか)ハラス他国ニ譲与シ又ハ貸与セサルヘキコトヲ約ス
 第三条 支那国政府ハ芝罘(チーフー)又ハ竜口(りゅうこう)ト膠州(こうしゅう)湾ヨリ済南(さいなん)ニ至ル鉄道トヲ連絡スヘキ鉄道ノ敷設ヲ日本国ニ允許(いんきょ)ス
「第四条 支那国政府ハ成ヘク速ニ外国人ノ居住及貿易ノ為自ラ進テ本条約附属書ニ列記セル山東省ニ於ケル諸都市ヲ開クヘキコトヲ約ス
   (大正四年往電第四号ニヨリ修正)
 第四条 支那国政府ハ成ルヘク速ニ外国人ノ居住及貿易ノ為自ラ進テ山東省ニ於ケル主要都市ヲ開クヘキコトヲ約ス其地点ハ別ニ協定スヘシ
(即チ支那側ヘハ最初ヨリ右ノ通修正ノ上提出シタルナリ)」

第二号甲案
日本国政府及支那国政府ハ支那国政府カ南満洲及東部内蒙古ニ於ケル日本国ノ優越ナル地位ヲ承認スルニヨリ茲ニ左ノ条款ヲ締約セリ
 第一条 両締約国ハ旅順(りょじゅん)大連(だいれん)租借期限並南満洲及安奉(あんぽう)両鉄道各期限ヲ何レモ更ニ九十九ケ年ツツ延長スヘキコトヲ約ス
 第二条 日本国臣民ハ南満洲及東部内蒙古ニ於テ各種商工業上ノ建物ノ建設又耕作ノ為必要ナル土地ノ賃借権又ハ其所有権ヲ取得スルコトヲ得
 第三条 日本国臣民ハ南満洲及東部内蒙古ニ於テ自由ニ居住往来シ各種ノ商工業及其他ノ業務ニ従事スルコトヲ得
 第四条 支那国政府ハ本条約附属書ニ列記セル南満洲及東部内蒙古ニ於ケル諸鉱山ノ採掘権ヲ日本国臣民ニ許与ス
「第四条 支那国政府ハ南満洲及東部内蒙古ニ於ケル鉱山採掘権ヲ日本国臣民ニ許与ス其採掘スヘキ鉱山ハ別ニ協定スヘシ(即チ支那側ヘハ最初ヨリ右ノ通ニ修正訂正セルナリ)」
 第五条 支那国政府ハ左ノ事項ニ関シテハ予(あらかじ)メ日本国政府ノ同意ヲ経ヘキコトヲ承諾ス
(一)南満洲及東部内蒙古ニ於テ他国人ニ鉄道敷設権ヲ与ヘ又ハ鉄道敷設ノ為ニ他国人ヨリ資金ノ供給ヲ仰クコト
(二)南満洲及東部内蒙古ニ於ケル諸税ヲ担保トシテ他国ヨリ借款ヲ起スコト
 第六条 支那国政府ハ南満洲及東部内蒙古ニ於ケル政治、財政、軍事ニ関シ顧問教官ヲ要スル場合ニハ必ス先ツ日本国ニ協議スヘキコトヲ約ス
 第七条 支那国政府ハ本条約締結ノ日ヨリ九十九ケ年間日本国ニ吉長(きっちょう)鉄道ノ管理経営ヲ委任ス

第二号乙案
日本国政府及支那国政府ハ支那国政府カ南満洲及東部内蒙古ニ於ケル日本国ノ優越ナル地位ヲ承認スルニ依リ茲ニ左ノ条款ヲ締約セリ
 第一条 (甲案ノ通リ)
 第二条 支那国政府ハ外国人ノ居住及貿易ノ為自ラ進テ本条約附属書ニ列記セル南満洲及東部内蒙古ニ於ケル諸都市ヲ開クヘキコトヲ約ス
 第三条 支那国政府ハ両締約国臣民カ合弁ニ依リ南満洲及東部内蒙古ニ於テ農業及附随工業ノ経営ヲ為サントスルトキハ之ヲ承認スヘキコトヲ約ス
 第四条 以下ハ甲案ノ通リ

第三号
日本国政府及支那国政府ハ日本国資本家ト漢冶萍公司トノ間ニ存スル密接ナル関係ニ顧ミ且両国共通ノ利益ヲ増進センカ為左ノ条款ヲ締約セリ
 第一条 両締約国ハ将来適当ノ時機ニ於テ漢冶萍公司ヲ両国ノ合弁トナスコト並ニ支那国政府ハ日本国政府ノ同意ナクシテ同公司ニ属スル一切ノ権利財産ヲ自ラ処分シ又ハ同公司ヲシテ処分セシメサルヘキコトヲ約ス
 第二条 支那国政府ハ漢冶萍公司ニ属スル諸鉱山附近ニ於ケル鉱山ニ付テハ同公司ノ承認ナクシテハ之カ採掘ヲ同公司以外ノモノニ許可セサルヘキコト並ニ其他直接間接同公司ニ影響ヲ及ホスヘキ虞(おそれ)アル措置ヲ執(と)ラントスル場合ニハ先ツ同公司ノ同意ヲ経ヘキコトヲ約ス

第四号
日本国政府及支那国政府ハ支那国領土保全ノ目的ヲ確保センカ為茲ニ左ノ条款ヲ締約セリ支那国政府ハ支那国沿岸ノ港湾及島嶼ヲ他国ニ譲与シ若クハ貸与セサルヘキコトヲ約ス

第五号
 一、中央政府ニ政治財政及軍事顧問トシテ有力ナル日本人ヲ傭聘(ようへい)セシムルコト
 二、支那内地ニ存在スル日本ノ病院、寺院及学校ニ対シテハ其土地所有権ヲ認ムルコト
 三、従来日支間ニ警察事故ノ発生ヲ見ルコト多ク不快ナル論争ヲ醸(かも)シタルコトモ尠カラサルニ付此際必要ノ地方ニ於ケル警察ヲ日支合同トシ又ハ此等地方ニ於ケル支那警察官庁ニ多数ノ日本人ヲ傭聘セシメ以テ一面支那警察機関ノ刷新確立ヲ図ルニ資スルコト
 四、日本ヨリ一定ノ数量(例ヘハ支那政府所要兵器ノ半数)以上ノ兵器ノ供給ヲ仰キ又ハ支那ニ日支合弁ノ兵器廠(しょう)ヲ設立シ日本ヨリ技師材料ノ供給ヲ仰クコト
 五、武昌(ぶしょう)ト九江(きゅうこう)南昌(なんしょう)線トヲ連絡スル鉄道及南昌、杭州(こうしゅう)間南昌潮州(ちょうしゅう)間鉄道敷設権ヲ日本ニ許与スルコト
 六、福建(ふっけん)省ニ於ケル鉄道、鉱山、港湾ノ設備(造船所ヲ含ム)ニ関シ外国資本ヲ要スル場合ニハ先ツ日本ニ協議スヘキコト
 七、支那ニ於ケル本邦人ノ布教権ヲ認ムルコト

第六号
支那国政府ハ日本国政府カ膠州湾租借地ヲ支那国ニ還付スル場合ニハ全部之ヲ商港トシテ開放スヘキコトヲ約シ且ツ日本国政府カ其指定スル地区ニ日本専管居留地ヲ設置スルコトニ同意ス(附属表略)

 「附記
本件交渉ニ際シ日本ヨリ支那側ニ対シ履行ヲ約束シ得ル事項ハ概(おおむ)ネ左ノ如シ
 一、袁(えん)大総統ノ地位並ニ其一身一家ノ安全ヲ保障スルコト
 二、革命党及支那留学生等ノ取締ヲ厳重励行スルコト又不謹慎ナル本邦商民浪人等ニ対シテハ充分注意スルコト
 三、適当ノ時期ニ於テ膠州湾還付問題ヲ詮議スヘキコト
 四、袁総統及関係大官叙勲奏請方又ハ贈与ノ義ヲ詮議スヘキコト
 ○備考 右ハ日置公使ノ含迄ニ交付セラレシモノニシテ書面ニ認メ支那側ニ差出セルモノニハ非ラス此ノ注意ハ訓令本書ニモ記入セラル」

     (『日本外交年表竝主要文書』上 による)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

ノーブレスオブリージュ

《「ノブレスオブリージュ」とも》身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務があるという、欧米社会における基本的な道徳観。もとはフランスのことわざで「貴族たるもの、身分にふさわしい振る舞...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android