対角線論法(読み)たいかくせんろんぽう(その他表記)diagonal method

改訂新版 世界大百科事典 「対角線論法」の意味・わかりやすい解説

対角線論法 (たいかくせんろんぽう)
diagonal method

証明の論法一種であり,考察している対象を縦横が無限の長さをもつ表に並べてその対角線上に並んだものを利用して議論する方法である。G.カントルによって集合で初めて使われた。〈0<x<1である実数全体の集合Iは非可算である〉ことを示す彼の論法を見てみよう。0<x<1である実数は小数0.a1a2a3……と表せる。x有理数のときは有限小数で表せるが,例えば0.32000……のように後に0が続いていると考える。さて,I={x|0<x<1}は可算集合であると仮定しよう。するとIのすべての元は,

と並べることができる。そこでこの表の対角線に出てくる数字を取り出し,小数β=0.b1b2b3……bn……をaii⁾≦4であればbi=6,aii⁾≧5であればbi=1と定義する。もちろん0<β<1であるが,作り方よりβは上の表には現れない。一方,上の表は0<x<1である実数をすべて含んでいるので,これは矛盾である。したがってIは非可算集合である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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