日本大百科全書(ニッポニカ) 「尋常性天疱瘡」の意味・わかりやすい解説
尋常性天疱瘡
じんじょうせいてんぽうそう
天疱瘡とよばれる一群の水疱性疾患のうち、もっとも通常的にみられる病型をいい、自己免疫疾患と考えられている。一般に突然、口腔(こうくう)内および全身の水疱の発生で始まり、水疱は軽い摩擦でもすぐに破れ、疼痛(とうつう)を訴える。診断は臨床症状のほか、組織学的、免疫学的検査によって確定される。水疱形成の著しい時期には、患者血清中に天疱瘡抗体を検出し、寛解期には消失することが知られている。水疱よりのタンパク漏出および細菌感染、口腔内水疱とびらんによる疼痛のための摂食困難などがあり、適切な治療を加えないと衰弱のため生命にかかわることもある。治療は、副腎(ふくじん)皮質ホルモンが通常用いられるが、ほかに金製剤、免疫抑制剤なども併用され、血中抗体との関連から血漿(けっしょう)交換療法なども行われている。いずれにしても経過が長いのが普通である。
[上田由紀子]