ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説
天疱瘡
てんぽうそう
pemphigus
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翻訳|pemphigus
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出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
全身に広く水疱を生ずることを特徴とする疾患で、自己免疫疾患と考えられており、特定疾患(難病)に指定されている。指頭で摩擦するような機械的刺激によって、一見健康そうな皮膚の表層がはがれ、表皮組織が裂けたところが水疱となる。その表皮の裂け方や臨床症状などから、尋常性天疱瘡、増殖性天疱瘡、紅斑(こうはん)性天疱瘡、落葉状天疱瘡などと分類されている。いずれも病期には血中に天疱瘡抗体が証明されるが、副腎(ふくじん)皮質ホルモンによる治療で寛解が期待される。
[上田由紀子]
なお、天疱瘡という疾患名には「疱瘡(ほうそう)」という漢字表記が含まれるが、天然痘(てんねんとう)の俗称である「疱瘡」とは、まったく異なるものである。天疱瘡は、前述のとおり、自己免疫性の皮膚疾患と考えられ、遺伝、またウイルスによる感染性はない。2008年(平成20)現在日本全国の患者数は、厚生労働省研究班の調査によれば、3000~4000人程と推定される(難病情報センター資料による)。一方、「疱瘡」または「痘瘡(とうそう)」とも称される天然痘は、天然痘ウイルスを病原ウイルスとする強力な感染症であり、種痘(しゅとう)の普及以前は、非常に恐れられた。日本では、天然痘が根絶されて久しく、患者はいない。
[編集部]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
天疱瘡は普通、前ぶれ(前駆症状)なく、健康な皮膚にいろいろな大きさの水ぶくれ(
尋常性では口のなかなどの粘膜も侵されることがほとんどですが、落葉状では粘膜は侵されないほうが多いとされています。
原因は、患者さんの血液のなかに含まれる免疫グロブリンという蛋白質の一部です。免疫グロブリンは、本来はウイルスやばい菌と闘うために私たちの体のなかにある蛋白質ですが、その一部が自分の皮膚と闘いだすために皮膚が傷んでしまいます。
具体的には、尋常性天疱瘡では皮膚のデスモグレイン(細胞と細胞をつなぐ蛋白質)3を、落葉状天疱瘡では皮膚のデスモグレイン1を攻撃します。
尋常性では、皮膚に突然水疱ができて、すぐに破れてびらん(ただれ)になります。びらんは治りにくく、触ると痛みがあります。おおよそ半分の患者さんでは、口のなかの治りにくいびらんで始まるとされます。
落葉状では、尋常性に比べて水疱が小さく乾きやすいので、皮膚に木の葉がついたように見えることがあります。普通は体中にできます。
診断では、厚生労働省が定めた診断基準が参考になります。以下に診断基準を抜粋しますが、わかりにくいのでカッコ内に解説を入れます。
①臨床的診断項目
a.皮膚に多発する破れやすい
b.水疱に続発する進行性、難治性のびらんないし
c.口腔粘膜を含む可視粘膜部の非感染性水疱、びらんないしアフタ性病変(口のなかに痛みがあるびらんができること)
d.ニコルスキー現象(強くこすると、そこに水疱ができること)
②病理組織学的診断項目(皮膚をとって検査する。皮膚生検という)
a.表皮間細胞間
③免疫組織学的診断項目(aは②とは別にもうひとつ皮膚をとる検査です。bは血液をとる検査)
a.病変部ないしは外見上正常な皮膚、粘膜部の細胞膜(間)部に免疫グロブリンG(IgG)(時に
b.流血中より
c.流血中に抗デスモグレイン1抗体や抗デスモグレイン3抗体があることをELISA法で証明する。
④判定および診断
a.①のうち少なくとも1項目と②を満たし、かつ、③のうち少なくとも1項目を満たす症例を天疱瘡とする。
b.①のうち少なくとも2項目以上を満たし、③のa、b、cを満たす症例を天疱瘡とする。
基本はステロイド薬による治療です。ステロイド薬は副作用もあり、マスコミの影響で怖い薬だから使いたくないと主張する患者さんが増えているようです。しかし、ステロイド薬が登場する前は、尋常性天疱瘡が死亡率90%以上の病気であったことを考えれば、ステロイド薬をのまなければ、10人のうち9人(以上)が、亡くなってしまうわけですから、ステロイド治療の大切さがわかると思います。
ステロイド薬でも快方に向かわない時には、免疫抑制薬を使用します。
何も治療しなければ高率で亡くなる病気ですから、治りにくい水疱が体にできた時には、皮膚科専門医に診てもらうことが大切です。
田中 俊宏
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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