小子部連螺蠃(読み)ちいさこべのむらじすがる

日本大百科全書(ニッポニカ) 「小子部連螺蠃」の意味・わかりやすい解説

小子部連螺蠃
ちいさこべのむらじすがる

「小子部連」は、雷神招迎などの豊饒祭祀(ほうじょうさいし)を行い、また小子部を率いて天皇側近の雑役護衛にあたり、軍事的側面をももつに至った氏族。藤原宮跡出土の木簡に「小子部門(ちいさこべのもん)」と記述するものがあり、門号氏族でもあったことがわかる。また「螺蠃(すがる)」は、雄略(ゆうりゃく)朝にかけてこの氏族の祖と語られる伝承的人物のこと。「雄略紀」には、天皇から養蚕のために蚕(こ)を集めることを命ぜられたが、誤って嬰児(こ)を集めて大笑いされ、その養育を申し付けられて小子部連という姓(かばね)を賜ったという。また天皇のために三諸岳(みもろのおか)の雷神を捕らえ、これを放ったので雷(いかずち)の名を賜ったともいう。この雷は『新撰姓氏録(しんせんしょうじろく)』(秦忌寸(はたのいみき)条)で、隼人(はやと)を率い諸国に離散した秦(しん)の民を集めた人と語られている。雷神捕捉(ほそく)の話は『日本霊異記(にほんりょういき)』第1話にもあり、ここでは螺蠃が死後もその墓柱で雷神を捕らえる。ただしこれら雷神捕捉の話は、本来小子部連の雷神招迎の祭祀に基づいて成立したものである。

吉井 巖]

『守屋俊彦著「上巻第一縁考」(『続日本靈異記の研究』所収・1978・三弥井書店)』

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