日本大百科全書(ニッポニカ) 「小平事件」の意味・わかりやすい解説
小平事件
こだいらじけん
太平洋戦争末期から戦争直後の時期に東京とその近郊で起きた連続婦女暴行殺人事件。犯人小平義雄(よしお)は第一次上海(シャンハイ)事変で出征し、そこで中国人に対する強盗・強姦(ごうかん)を覚えた。その後、妻の実家と紛争を起こし、傷害殺人の罪で懲役15年の刑に処せられたが、刑務所生活で物品がいかに人を誘惑するかを知った。1945年(昭和20)5月品川の海軍衣糧廠(いりょうしょう)寄宿舎で宮崎光子を強姦絞殺して以後、1年余の間に、食糧や就職口を求めている若い女性にそれらを紹介するといって接近し、強姦殺人事件10件(小平の自供では7件)を繰り返した。小平は46年8月20日逮捕され、48年11月16日最高裁で死刑が確定したが、戦争と食糧難の影が色濃い事件であった。
[赤澤史朗]