小春/治兵衛(読み)こはる/じへえ

朝日日本歴史人物事典 「小春/治兵衛」の解説

小春/治兵衛

江戸時代の心中物戯曲の主人公。モデルは享保5(1720)年10月16日未明,大坂網島の大長寺で心中した,曾根崎新地の遊女小春天満紙屋の主人治兵衛。同年12月,大坂竹本座で初演された近松門左衛門作の人形浄瑠璃「心中天の網島」に同名で主人公とされており名高い。近松晩年の傑作で,貞淑な女房おさんと子供ふたりを持ちながら,30歳近い治兵衛が小春と心中していく姿を,10日間にしぼって描き,特に小春とおさんの女同士の義理が巧みに描写されている。改作も多いが,「心中紙屋治兵衛」(近松半二ほか作)やその改作「時雨炬燵」が,上方和事の狂言として演じられてきた。

(近藤瑞男)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報