義理(読み)ぎり

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

義理
ぎり

村社会における相互関係を維持するために定められた行為。この義理を欠く者は,村八分という制裁を受けることもあった。親戚の間で果されるものと,村社会に対して果さなければならないものとに大別される。たとえば,冠婚葬祭時や田植え,家の新築,屋根ふき道普請などで,互いに協力し,労力を提供することがなかば義務づけられ,冠婚葬祭時の贈答に対して必ず返礼をするという行為も義理堅いとされる。今日では一般に交際関係や体面上必要とされる行為やものごとを広く含めていう。

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デジタル大辞泉の解説

ぎ‐り【義理】

物事の正しい筋道。また、人として守るべき正しい道。道理。すじ。「義理を通す」「義理にはずれた行為」
社会生活を営む上で、立場上、また道義として、他人に対して務めたり報いたりしなければならないこと。道義。「義理が悪い」「君に礼を言われる義理はない」「義理をわきまえる」
つきあい上しかたなしにする行為。「義理で参加する」
血族でない者が結ぶ血族と同じ関係。血のつながらない親族関係。「義理の母」
わけ。意味。
「新訳の経は猶、文詞甚だ美なりと言へども、―淡く薄し」〈今昔・七・一二〉

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百科事典マイペディアの解説

義理【ぎり】

今昔(こんじゃく)物語集》の用例では,物事の正しい道筋の意。のち対人関係上の礼儀正しさ,良い道理の意となる。近世初期の儒者林羅山(らざん)は儒教の〈義〉と結びつけ,人間関係における道義とした。近世社会では各階層ともに義理の関係が重視された。井原西鶴(さいかく)や近松(ちかまつ)門左衛門の作品には,内面的に〈人情〉と葛藤・対立する〈義理〉が記されている。

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世界大百科事典 第2版の解説

ぎり【義理】

古くは,物事の正しい筋道の意で,《今昔物語集》や《愚管抄》にその用例が見える。また,文章やことばの〈意味〉という使われ方もあった。中世末期の《日葡辞書》には,すでに,〈良い道理〉とともに〈礼儀正しさ,律義さ〉という意味があげられているが,この言葉が,対人関係上,守り実践しなければならない道義をさすものとして特に重んじられるようになるのは,近世社会においてである。近世初めの儒者林羅山は,〈人ノ心ノ公平正大ニシテ,毛ノサキホドモ人欲ノ私ヲマジヘズシテ,義理ヲ義トスルハ,義ゾ〉(《春鑑抄》)といい,〈義理〉を儒教の〈義〉と結びつけ,世俗的な人間関係における絶対的な道義とした。

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大辞林 第三版の解説

ぎり【義理】

物事の正しい道筋。人間のふみおこなうべき正しい道。道理。
対人関係や社会関係の中で、守るべき道理として意識されたもの。道義。 「 -を欠く」 「 -と人情の板挟み」 「今さら頼めた-ではない」
他人との交際上やむを得ずしなければならないこと。 「お-で顔を出す」
意味。わけ。 「苗代なわしろの代といふは、かはるといふ-也/三冊子」
直接血縁関係のない者の間にある、血縁同様の関係。 「 -の父」

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精選版 日本国語大辞典の解説

ぎり【義理】

〘名〙
① 物事の正しい道筋。また、人の踏み行なうべき道。道理。
※米沢本沙石集(1283)三「癲狂が利口、世法自(より)仏法の無量の義理(キリ)をふくめり」 〔史記‐始皇本紀〕
② 職業、階層、親子、主従、子弟などのさまざまな対人関係、交際関係で、人が他に対して立場上務めなければならないと意識されたこと。体面。面目。
※曾我物語(南北朝頃)二「善き侍の振舞、弓矢のぎり、これにしかじと、惜しまぬ者はなかりけり」
③ つきあいや社交の場でのべる口上や挨拶。→義理を述べる
④ 特に世間的なつきあいの上で、仕方なしにする行為やことば。お義理。
※大田定吉宛か大田南畝書簡‐享和元年(1801)八月五日「旅館中之義理有之、贈答に困り申候」
⑤ 血縁以外の者が血縁と同じ関係を結ぶこと。また、その関係。
※読本・椿説弓張月(1807‐11)続「王女(わんにょ)は義理(ギリ)ある子に侍れば」
⑥ わけ。意味。また、字句の内容。
※令義解(718)考課「皆挙経文及注問。其答者。皆須明義理。然後為上レ通」
※今昔(1120頃か)七「新訳の経は猶、文詞甚だ美也と云へども、義理淡く薄し」 〔蜀志‐李譔伝〕
⑦ (能で) 劇としての筋、内容。また、その面白さ。
※風姿花伝(1400‐02頃)五「されば、和州の風体、物まね・儀理(ぎり)を本(ほん)として」

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世界大百科事典内の義理の言及

【権利意識】より

…この主張は,当時,社会の根本的な民主化への努力が実定法の改革を重要な梃子(てこ)として推し進められたのに対して,一般国民が新たに法律上与えられた権利を行使してそれを実生活上のものとする目ざましい力を示さなかったという事情を背景として,直接には権利意識(1)の強化を奨励したものであるが,理論的には,権利意識(2)の欠如をも鋭くつき,法文化の問題を提起したものであった。事実,日本の法文化には,義理の観念に象徴される伝統的な秩序観念が今日もなお生きており,法と秩序のあり方を強くいろどっていることは否定できない。この観念の下では,社会関係の規律は,要求される行為や要求の根拠となるルールを明示することなく,義務者が他者の利益や心情をおもんぱかりみずからしかるべきと考える行為を進んで行うよう社会的圧力を加える,というしかたによってなされるのがよいとされ,権利の主張は,秩序を乱す行為として否定的にしか意味づけられない。…

【近松門左衛門】より

… 時代と世話では作劇法も異なる。しかし両者に一貫した作劇法も指摘できるわけで,それは〈義理〉の作劇法であった。〈某(それがし)が憂(うれい)は義理を専(もつぱ)らとす。…

【中国】より

…なお,混乱を避けるためにことわっておきたい。現代中国歴史学の通用語として,中国の伝統的な歴史学でいう郡県制の時代を封建制の時代としているのは,まるであべこべの用語法であるが,これは上部構造たる政治体制によってでなく土台たる生産関係によって時代区分(原始共産制時代→奴隷制時代(古代)→封建制時代(中世)→資本主義時代(近代)→共産主義時代)を行うべきだとするマルクス主義理論によっているからである。つまり〈封建〉はfeudalismの訳語として用いられているのであって,この理論によれば,早い説では秦(前246‐前207)以前から,おそい説(日本のマルクス主義史学の一派)では宋代(960建国)から(両説の差1000年!),アヘン戦争(1840)までを封建時代(中世)とし,アヘン戦争以後を半封建・半植民地という特殊中国的近代とする。…

【日本社会論】より

…この二元論的対比が,非欧米社会の典型としてとらえられた日本に機械的に適用されて,恥辱回避傾向としての〈恥の文化〉という類型化がなされたのではあるまいか。
[〈恩〉と〈義理〉]
 〈恥〉という文化型の中核としてのエートスethosが,必ずしも日本文化を特色づけるものでないとしたら,何が日本の文化型を規定しているのであろうか。日本人の対人関係を規制するモラルとして,古来,〈恩義〉という観念が存在している。…

※「義理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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