居直(読み)いなおる

精選版 日本国語大辞典 「居直」の意味・読み・例文・類語

い‐なお・る ゐなほる【居直】

〘自ラ五(四)〙
① すわり直す。
(イ) いずまいを正す。
※枕(10C終)二二二「ゐなほり、ひさしく待つもくるしく」
※俳諧・曠野(1689)二「不図とびて後に居なをる蛙哉〈松下〉」
(ロ) すわり直して、強い言動に出ようと構える。
平家(13C前)二「西光もとよりすぐれたる大剛の者なりければ〈略〉居なをりあざわらって申けるは」
② きまった場所にきちんと身を落ちつける。
太平記(14C後)四「敷皮の上に居直(イナヲラ)せ給ひて、〈略〉閑々と辞世の頌をぞ被書ける」
③ (①(ロ) から「すわり直す」の意が失われて) 自分の立場が不利になったり、欠点弱点を突かれたりしたときなど、相手に対して逆に強い態度やおどすような態度に出る。
※或る女(1911‐19)〈有島武郎〉後「木部はどうかすると居直るやうな事をしかねない男だと」
④ 後になって利(収入や役柄など)が多くなることをいう、芝居仲間の隠語
※南水漫遊拾遺(1820頃)四「居直る 後に利強ふなる事」

い‐なおり ゐなほり【居直】

〘名〙
① 居直ること。いずまいを正すこと。
讚岐典侍(1108)下「参らせ給ひて、人々ゐなほりなどすれば」
② 急に態度を変えること。
肉塊(1924)〈谷崎潤一郎〉六「中途で居直りされたんぢゃ、此方も強ひて否と云ふ事は出来ないからね」
③ =いなおりごうとう(居直強盗)〔日本隠語集(1892)〕
④ 言ったことを違えること。
産婦が分娩後六日目に床に起きあがること。
浄瑠璃・信州姥捨山(1730)四「はや居直(ヰナホ)りの六日だれ」
⑥ 下がってきた相場途中からまた上がること。出直り。〔取引所用語字彙(1917)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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