日本大百科全書(ニッポニカ) 「履物屋」の意味・わかりやすい解説
履物屋
はきものや
履き物を販売する店。20世紀になってからの呼称で、それ以前は下駄屋。履き物でも足の甲を覆う靴などは靴屋で扱い、おもに鼻緒をすげる草履(ぞうり)、雪駄(せった)、下駄、足駄などであった。すでに中世の15世紀には草履作り、足駄作りの職人がいて自家製品の販売もしていた。17世紀には尻切(しきれ)(草履の一種)作りや雪駄師や下駄屋という専門職人、また、雪駄直しや足駄の歯入れという出職(でしょく)の修理職人もできてきた。それらの新規製品は問屋に集荷され、小売りの下駄屋に卸された。問屋は雪駄、草履、鼻緒それぞれに分かれていたが、兼ねるものもあり、なかには傘、笠(かさ)を扱うところもあった。下駄屋では下駄職人が鼻緒をすげて販売もした。また、そうした履き物の台は問屋から仕入れ、鼻緒だけをすげるところもあった。第二次世界大戦後は、履物屋のなかには既製品を販売する商人の店もできた。
[遠藤元男]
『仲田定之助著『明治商賣往来』(1968・青蛙房)』