差し退く(読み)サシノク

デジタル大辞泉 「差し退く」の意味・読み・例文・類語

さし‐の・く【差し退く/差し除く】

[動カ四]
しりぞく。離れる。
「―・きてそばみて居ぬ」〈今昔・一四・四〉
関係しなくなる。縁が薄くなる。
「―・きたる人々の心地だに、いといみじうあはれに悲しきに」〈栄花・峰の月〉
[動カ下二]しりぞかせる。立ちのかせる。
雑々ざふざふの人なきひまを思ひ定めて皆―・けさする中に」〈・葵〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「差し退く」の意味・読み・例文・類語

さし‐の・く【差退・差除】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 カ行四段活用 〙 ( 「さし」は接頭語 )
    1. しりぞく。遠ざかる。離れる。去る。立ちのく。
      1. [初出の実例]「あつきに、さしのきてをと、さりげなくいひなして」(出典:夜の寝覚(1045‐68頃)一)
    2. 縁が薄くなる。親しみの気持が薄れる。
      1. [初出の実例]「さしのきたる人々の心地だに、いといみじうあはれに悲しきに」(出典:栄花物語(1028‐92頃)峰の月)
    3. あきあきしていやになる。
      1. [初出の実例]「余りに長くして、日景(かげ)かたぶきければ、見物者共さしのきて」(出典:米沢本沙石集(1283)六)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 カ行下二段活用 〙 ( 「さし」は接頭語 ) しりぞかせる。立ち去らせる。離れさせる。また、とりのぞかせる。
    1. [初出の実例]「よき女房車多くて、雑々(ざふざふ)の人なき隙を思ひさだめて、みな、さしのけさする中に」(出典:源氏物語(1001‐14頃)葵)

さし‐しりぞ・く【差退】

  1. 〘 自動詞 カ行四段活用 〙 ( 「さし」は接頭語 ) 後にさがる。あとずさりする。さししぞく。
    1. [初出の実例]「まゆみの木のしたに、うちまつおどろおどろしからぬほどにおきて、さししりぞきてともしたれば」(出典:源氏物語(1001‐14頃)篝火)

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