鉄製の籠の中で薪をたいて照明する火をいい,またその鉄製の籠を篝という。〈かがり〉は〈輝り〉の意であるという。《万葉集》に鵜飼いのときに篝を用いた歌があるので,奈良時代からあったことがわかる。平安時代以来さかんに用いられ,《北野天神縁起絵巻》には船の舳先(へさき)につっている。篝の形には半球形のもの,下を細くして鉄輪(かなわ)が動くようにしたものなどがある。鎌倉時代には京都に48ヵ所の篝屋がおかれ,ここに兵士がたむろし,夜中の警護に当たった。篝というのを衛兵のことにも解するのはこれからである。儀式の庭上,陣中にも用いられた。
執筆者:江馬 務
漁火としての篝火は〈いさりび〉ともいう。このほか漁師の間では〈夜焚き(よたき)〉〈火振り〉〈焚入れ〉などという言葉が,篝火をたく漁の意として用いられてきた。水面で暗夜に火をたくと,イワシ,アジ,サバ,イサキ,イカなどは火影に寄り集まってくるが,アユ,サワラなどは火光に驚いてにわかに逃げる。篝火はこうした魚の習性を利用したもので,古くから各地の川や海岸で行われた。しかし海の網漁では,焚入れ漁業の行われない海域で新しくこれを始めようとすると,前例のない漁法として周囲の漁師の反対にあい,禁止されることが多かった。その後,明治末期ころから松明(たいまつ)以外に石油,アセチレンガス,カーバイドによる発火方法が導入され,さらに電力による集魚灯の利用がさかんになった。
執筆者:桜田 勝徳
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
屋外で照明用に燃やす火。照明としてもっとも原初的なものは庭火(焚(た)き火)であり、それから進んで、椀(わん)または籠(かご)状(多くは鉄製)のものに薪(たきぎ)(多くは松)を入れて燃やすようになったのが篝火である。夜中の警護・照明または漁猟の際に用いられ、古代以来広く行われたが、現代では薪能(たきぎのう)や鵜飼(うかい)に用いられるのが印象に残りやすい。『源氏物語』第27帖(じょう)を「篝火」と題しているのは、ほのかな篝火の火影に見える女性の姿を情趣深くとらえるところからきたものである。
[萩原龍夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新