差上(読み)さしあげる

精選版 日本国語大辞典 「差上」の意味・読み・例文・類語

さし‐あ・げる【差上】

〘他ガ下一〙 さしあ・ぐ 〘他ガ下二〙 (「さし」は接頭語)
[一]
① あげる。もちあげる。
蜻蛉(974頃)上「蔀(しとみ)さしあけたる所に宿りて」
② 手などに持って高くあげる。高く掲げる。
今昔(1120頃か)五「其の時に象来て比丘を鼻に掻懸て遙に指上げて」
太平記(14C後)二六「色々の旗を差上(サシアゲ)飯盛山にぞ向ひ合ふ」
③ 声をはり上げる。声の調子を高くする。
※宇治拾遺(1221頃)九「銅の湯を〈略〉ほそく、らうたげなる声をさしあげて、泣く泣くのむ」
④ 「与える」の謙譲語。献上する。たてまつる。
※太平記(14C後)二「鬘(びん)の髪と消息とを差あげて声も惜まず泣ければ」
[二] 補助動詞「あげる」をさらに敬意を含めていう語。動詞の連用形に、助詞「て(で)」の付いた形に添えて用いる。
※金(1926)〈宮嶋資夫一四わたしの力で出来るだけの事はして差(サ)し上(ア)げたいと思ひます」

さし‐のぼ・す【差上】

〘他サ下二〙
① 上の方にあげる。のぼらせる。
説経節・をくり(御物絵巻)(17C中)一二「月さしのほす、さよのなか山」
② 都へのぼらせる。上京させる。また、物を都に送る。
愚管抄(1220)五「土肥実平梶原景時、次官親能など云者さしのぼせたるが、左右(さう)なく京へ打いりて」
③ (「さし」は棹や櫓(ろ)を使う意) 舟を川上の方にさかのぼらせる。
日葡辞書(1603‐04)「フネヲ saxinobosuru(サシノボスル)

さし‐あげ【差上】

〘名〙
① さしあげること。
版画絵師が校正刷一枚に彩色を完全に施し、彫師に渡してその通り彫刻させること。
※こしかたの記(1961)〈鏑木清方口絵華やかなりし頃「画師は〈略〉彩色をする。『さしあげ』と云って、摺師はこれを手本に仕事をするのである」
③ ウグイス・コマドリなどの雛を野山から連れてきて、飼育すること。

さし‐あが・る【差上】

〘自ラ四〙 (「さし」は接頭語) 上の方にのぼる。特に、太陽、月などがのぼる。
※源氏(1001‐14頃)若紫「加持など参るほど、日高くさしあがりぬ」

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