日本大百科全書(ニッポニカ) 「巴里のアメリカ人」の意味・わかりやすい解説
巴里のアメリカ人
ぱりのあめりかじん
An American in Paris
アメリカ映画。監督ヴィンセント・ミネリ。1951年作品。スター俳優のダンスと個性が物語の筋を凌駕(りょうが)し、映像表現や様式が重視された形式主義的ミュージカルジャンル作品。パリで画家を目ざすアメリカ人ジェリー(ジーン・ケリーGene Kelly、1912―1996)の友人や恋愛関係がダンスシーンとともに描かれる。ミュージカル映画は、1940年代から1950年代にかけてが黄金期で、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー社(MGM)が優秀な人材と市場を独占していた。本作はミネリの代表作でもあり、この時代を代表するミュージカル作品である。物語のリアリズムを装うことなく行われるダンスシーンの挿入は、それ自体が作品の様式となっている。なかでも主演のジーン・ケリーがみせるダンスは、うっとりと魅せられる従来の振付けの常識から一線を画し、自らの肉体美を強調するような精悍(せいかん)な飛翔(ひしょう)や勇壮な跳躍によって身体的個性を前面に出している。1951年のアカデミー作品賞、脚本賞、ミュージカル映画音楽賞など6部門受賞。1952年(昭和27)日本公開。
[堤龍一郎]