日本大百科全書(ニッポニカ) 「巴里祭」の意味・わかりやすい解説
巴里祭
ぱりさい
Quatorze Juillet
フランス映画。1932年ルネ・クレール監督作品。翌年日本公開。原題は「7月14日」。パリ情緒豊かな下町を舞台に、革命記念日の祭り気分に沸き立つ街の情景を描く。美しい花売り娘アンナ(アナベラ)と若いタクシー運転手ジャン(ジョルジュ・リゴー)の恋を中心に、陽気な商人や気むずかしい老人やわんぱくな悪童たちなどが背景を彩る。ちょっとした誤解から仲たがいする2人の恋物語も軽いが、周囲の人物も添景的で、全体にスケッチ映画といった趣(おもむき)は、同じクレールのトーキー第一作『巴里の屋根の下』と似通っている。祭りの前夜から当夜にかけてのパリの街は、提灯(ちょうちん)や万国旗に飾られて、ときにはにわか雨まで加わって情緒を盛り上げる。
[登川直樹]