改訂新版 世界大百科事典 「市法貿易法」の意味・わかりやすい解説
市法貿易法 (しほうぼうえきほう)
江戸初期の長崎貿易における1672-84年(寛文12-貞享1)の取引法。当時は市法貨物商売の法,貨物仕法といった。相対(あいたい)貿易法時代のせり買いによる輸入原価の高騰,銀流出の反省から,長崎奉行牛込忠左衛門の主導のもとに,(1)直轄5都市(堺,京都,長崎,江戸,大坂)ほか西国一円の取引希望者6600人余を,実績や資産によって各人の株高を決め,市法会所に組織する,(2)会所では宿老,目利(めきき)などが査定し,奉行が認めた日本側の〈指し値〉(言い値)で外国人から買い取り,これを市法商人に株高内での入札払いとする,(3)その莫大な差益は,役料,長崎助成などを引いて,全市法商人に株高に応じて配当する,(4)もっとも,唐船貿易からの収益の3分の1は長崎各町に配分する,というしくみである。これにより輸入原価の抑制,五ヵ所貨物宿老を通じた商人・流通統制が進み,対外貿易における地元長崎の特権的受益権が確立した。しかし外国人側や旧糸割符仲間などからの批判は強く,13年で廃止された。
執筆者:中村 質
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報