改訂新版 世界大百科事典 「帰納的関数」の意味・わかりやすい解説
帰納的関数 (きのうてきかんすう)
〈実際effectiveに計算可能な関数〉に関する数学的概念であるリカーシブ関数recursive functionに対して,日本で定着している術語。1931年,K.ゲーデルが原始帰納的関数として初めて定式化し,これを用いて不完全性定理の証明を得た。自然数{0,1,2,……}の上で定義され,自然数を値とする関数f(x1,……,xn)が,
f(x)=x+1 ……(1)
f(x1,……,xn)=q (qは定数) ……(2)
f(x1,……,xn)=xi (1≦i≦n) ……(3)
f(x1,……,xn)=g(h1(x1,……,xn),……,hm(x1,……,xn)) ……(4)
(ここで,gはm変数の関数で,g,h1,……,hmはすでに与えられた関数)
(ここで,g,hはすでに与えられた関数で,n=1のときg( )は定数を表すものとする)
を有限回適用して定義されるとき,原始帰納的関数primitive recursive functionという。次に,μyR(*,y)は,命題R(*,y)が成り立つようなyが存在するときそのようなyの最小数を値とし,そうでないときは値が定まらないものと規約する。関数f(x1,……,xn)が上の(1)~(5)および,
f(x1,……,xn)=μy[g(x1,……,xn,y)=0] ……(6)
(ここで,gはすでに与えられた関数で,すべての自然数の組x1,……,xnに対して,つねにg(x1,……,xn,y)=0を満たすようなyが存在するものとする)
を有限回適用して得られるとき,一般帰納的関数general recursive functionという。このような定式化および帰納的関数の理論recursion theoryの発展にはクリーネS.C.Kleeneの寄与に大きく負うている。なお,一般帰納的関数はチューリング機械によって計算可能な関数と一致した概念である。
→計算可能性 →数学基礎論
執筆者:柘植 利之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報